第12話

嫌な夢だった。

寒さに朝日を浴びようと、亀甲石に登る。

眼下に僕の吐いたげろ。

空きっ腹、頭痛。

煙草に火をつける。

オエーッ

えづく大声、繰り返し5回。

静かな山中に響き渡る。

涙目、空を見上げると、僕の吐いた煙草の煙が、妻と4人の子どもたち。

スーッと、消えた。

もう一服。

吐いた煙、今度はあの、鳩みたいに鳴く猫に。

そのまま留まる。

また一服。

右手首のない猿になって、二匹並んだ。

ふわふわ、ゆっくり、空の方へ、僕から離れていく。

「待って、行かないでくれ!」

僕は亀甲石の上、立ち上がり、2歩、3歩。

あ!

つるりと、朝露で濡れた石に足を滑らせ、後頭部を強く打ち付けて弾んで落ちた。


昨夜吐いた、げろの上に。

薄れる意識。

亀甲石は、揺れている様に見えた。

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