第7話

 お父様が帰った後、私はケーキを堪能していた。

 太る~。と思いつつも美味しくて止まらない。


 「うふふ。美味しそうに食べるわね」


 優しい瞳をリサおばあ様は私に向けている。なぜかしらね?


 「おばあ様。帰ったの? あ、ファビア」


 もぐもぐとケーキを咀嚼中だった私は、軽く頭を下げた。

 現れたのは、唯一の後継者のエメリック様だ。彼は、リサおばあ様にそっくりで、銀灰色の髪にサファイヤブルーの瞳の令息。


 「リック。こっちへおいで。今日から妹だと思って仲良くするんだよ」

 「宜しくお願いします。エメリック様」


 ケーキをごくんと飲み込むと、言われた通り近くに来たエメリック様に、その場で立って頭を下げて挨拶をした。


 「うん。宜しく。ファビア。食べ終わったら魔法の話を聞かせてよ」


 驚く事にエメリック様が目を輝かせて言う。

 思ったより受け入れられているのね。


 「あら嫌だわ」


 リサおばあ様が、悲しそうに言う。

 やっぱり孫にそう言う話はダメかしら。


 「私も聞きたいわ。ここでお話しましょう」

 「はい! おばあ様」


 自分も聞きたかっただけか。

 私は、何も返事を返してないけど、二人の間ではここで魔法の話をする事になったようだ。

 だけど、話す事なんて何もないのにね。


 エメリック様が席に着けば、使用人が紅茶を淹れる。

 二人が、促すように私を見ているから仕方なく成り行きから話す事にした。


 「私ね、ケーキが大好きなの! だから大きくなったらケーキを食べられる所にお嫁に行きたいとおもったのだけど、無理だとわかって。だったら自分で稼いでケーキを食べようと思ったの!」


 わざと子供っぽく魔法博士を目指すきっかけを話した。まあ嘘ではない。それも目的の一つなのだから。


 「だからここに来るのいつも楽しみだったの」


 これも本当よ。年に数回、ここに来てお食事をするのが楽しみだった。なので、絶対にご飯が入らないドレスは着ない。まあ、子供だったので今まで着て来なかったけど。

 それでも見栄でピチッとしたドレスを着せられた子もいた。そういうドレスは、食べ物がお腹に入らない。

 あと汚すからと、ケーキなども食べさせてもらえてない子もいた。可哀そうにと横目に見つつ私は平らげていたけどね。


 「そういえば君は、着いたらすぐにケーキに飛びついていたね」


 エメリック様が、クスクスと笑う。

 よく覚えているわね。親族が集まる時は、この広い庭園で広く場所を取れるところで行う。

 何せこの時ばかりと、擦り寄る為に来るのだから。来れるなら絶対に来る。


 この世界は、私が読んだ事がある小説の貴族達とちょっと違う。傍系達が何かすれば、本家も責任を取らされたりもするらしいので、近況を聞いたりする場でもあるらしい。


 なので子供なんて、放っておかれる。

 使用人達が、子供の見張り役もとい世話役をさせられ、この庭園を子供達は駆けまわる。

 まあ14歳ぐらいになれば、貴族学園に行くようになるので、静かに雑談しているけどね。


 子供だけで多い時で50人程いる中で、大人しくしていた私を彼が知っているとは驚きだわ。

 今日、私が来ると聞いていたから名前を知っているのかと思った。

 それに今思えば、屋敷に入った時に侯爵に挨拶はすれど、彼に直接挨拶に行った事なかったわ!


 大体の子は、親に挨拶しに行きなさいと言われ行くけど、私は将来魔法博士になって、ここに頼るつもりなかったし、お父様はそう言わなかったから。

 もちろん、継母は言っていたわ。それを私は無視していた。マリーは従って、挨拶に行っていたわね。


 「会話した事なかったと思うけど……」


 私がボソッと言えば、エメリック様が目を丸くする。


 「そうだね。僕って嫌われていた?」

 「え! 嫌ってなどいません」

 「うふふ。ケーキに負けたようね」


 リサおばあ様がそう言えば、エメリック様が「え~」と不満げに言う。でも、私は苦笑いしかできなかった。だって、リサおばあ様の言う通りなのだもの。


 「いいや。これから仲良くなれば。それで? 試験ってどんな感じだったの?」


 エメリック様が、興味津々で聞いてきた。


 「穴埋め問題がほとんどで、計算式も少し。一問一点で、90点以上で合格! 教室で一位抜けしたのよ!」


 私は自慢げにそう言った。だって、お父様に自慢したかったけど、そういう雰囲気ではなかったからね。


 「まあ、凄いわね。最年少でテストを受けてみんなより点数がいいなんて!」

 「うん。魔法なんて僕わからないし、計算式もあって一位抜けなんて、びっくりだよ」


 二人は、私を絶賛してくれた。

 私は、お父様にこれをして欲しかったのだけどね。


 「えへへ。ありがとう。でも令嬢が少なくて驚いたわ」

 「今の話を聞いたら無理だよ。僕の友人にも魔法学園に通っている者がいるけど、魔法属性持ちでも受かるの難しいて聞いたし」

 「え! ご友人に?」


 それって同じ歳? エメリック様って確か、私の一つ年上よね。だったらあり得ないか。


 「あ、同学年ではないから出会ってないかもね。レオンス・タカビーダ。侯爵令息だからすぐわかると思うよ。彼も変わってるから」


 って、侯爵令息だったぁ!!

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