40.胸糞悪い
「コインが欲しいんだけど、いい?」
「支払いは?」
「魔力で」
「かしこまりました。奥へご案内します。……お名前は?」
「ヴァイオレットよ」
黒のマントを被り、顔が見えないように慎重に進む。
見られても問題はないのだが、色ありだとどうしても目立ってしまう。
ナイスバディなお姉さんになるには衣装と色気に合う亜麻色に似た蜂蜜色の髪がピッタリだと思ったのだ。
ユリアーナになってからおしゃれにも少し目覚めつつあるのかもしれない。
……その理由のほとんどが、
エリアーナはとにかく可愛いもの好きで流行やおしゃれに敏感な子で、愛するユリアーナを着せ替え人形のように振り回している。
エリアーナが楽しそうなので私は特に気にしていない。
「こちらです」
「ありがとう」
通された部屋には数人の
その真ん中にはふてぶてしい中年のおじさんがいる。
―――だれ、こいつ。
いかにも
何にもされていないが、これが
「ヴァイオレットさん、でよろしいか?」
「えぇ」
私は『ヴァイオレット』になりきる。
口調、
「支払いは魔力、とのことだが、今はわかっているのかい?」
「魔力液を変換すればいいのでしょう?」
「そうだ」
魔力液というのはその名の通り、魔力でできた液体だ。
だが魔力は目に見えない。
それを液状に変換させるのは至難の業だ。
そのため、魔力液は高値で売れる。
その量と濃度で値段は決まる。
濃度が濃いほど、値段は跳ね上がる。
「どのくらいコインが欲しいんだ」
「うーん……私、こういうのは初めてだからよくわからないわ。だいたい、どのくらいで取引するの?」
「はっ、何も知らないで来やがったのか、おまえは。そうだな、こういうのは多めに買うんだ。100コインは必要だ。奴隷ってのは金がかかるんだよ」
―――胸糞悪い。
人を取引してる時点で最悪だ。
気持ち悪い。
だが、よくあることだ、異世界では。
私もこの世界に染まらなければならない。
生きるためには、必要なことだ。
「なにか目当てがあるんだろう? どいつを買いたいんだ?」
「今日の目玉って言われてる(?)少年が欲しいの。あの、暗い髪の」
「! あいつを……?」
そう言うと男たちは鼻で笑った。
なにかおかしいだろうか。
「あいつはやめとけ、嬢ちゃん。始まりの金額は100万コインからだ。つまり、どんどん金額が跳ね上がる。1億とかいくだろうな」
「どうしてそんなに高いの? 少年はそんなに素晴らしい人なの?」
「あいつは『常闇の
―――元右腕……強いのは知ってるけど、結構いい地位にいたのね。
ここでエヴァの情報を掴めるとは。
この男から聞き出せるかもしれない。
私は男から情報を引き出すことにした。
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