第16話

 「なんでまたヤドカリ?なのさ。他に強そうな動物もいるよ?熊とか虎とか。それこそブラックタイガーみたいなさ。」


 熊と虎はこの世界にも語彙としてはあるんだな。俺には使われているもの、いないものの区別が出来ん。


「昨日の戦いでは確かにブラックタイガーは強敵だった。でも、魔力弾が通用しなかった訳じゃない。」


「ふむふむ。」


「問題は、潛を含めて俺たち全体の強度にあると思ったんだ。」


「要するに攻撃手段はあるのだから、潛の強度をもっと上げて、より強い魔力弾を放てるようにしたいと。」


「そのとおり。でも今回のメインは、防御手段の確立だ。そこで、俺の脳裏に浮かんだのが、背中に貝殻を纏っているヤドカリって訳。」


「う〜ん、それなら別に亀でもよく無い?それに、僕の木刀を作った時みたいに盾を作るという考え方もあるよ。」


「亀はなんか遅そうでイヤだった。それに亀って、甲羅の下に足がついてるだろ?凸凹な地面を歩く時とかは、その分安定しないと思うんだよな。対して、ヤドカリは体のほぼ一点から脚が生えてる。それも8本も(ハサミを除いて)。だから、必然的に亀よりも安定するはずだろ?……それと、盾の件も却下だ。」


「なんで?」


「いくら盾が硬くても、それを扱う俺たちが軽いんじゃ強い攻撃には耐えきれずに、吹き飛ばされるだろ。」


「ああ〜、確かに。それに対抗するには大きな盾を作るしか無いけど、それはそれで持ち運びに不便だもんね」


「そういう事だ」


 早速俺たちは人形作成に取り掛かり始める。とは言っても、今日するのはその内の一番初めの工程。素材集めである。

 ヤドカリと言っても、勿論、前世の世界で見たような小さなものではない。盾役として頑張ってもらうのだから、だいたい自動販売機くらいの大きさは欲しい所だ。


 だから今回の人形作成は、大量の素材が必要となる。


 ちなみに今回の主な素材は『石』だ。今、キリに大きな岩があるところを探してもらっており、見つけ次第、俺が直接出向いてその岩を加工する手筈となっている。

 岩場を探しているのがキリだけなのは、俺が着いていくと効率が悪い、とキリに言われたからだ。

 俺が全速力で走っても、キリのジョギングにも追いつけないとか、職業の力って改めて凄いと思ったよ。




 「川があったよー!」


「案外早かったな。」


 それから数分後、川を見つけたキリが帰ってきた。

 俺は、その間に書いていた人形の設計図を脇に抱えて、キリについていく。


 「おお!最ッッ高じゃないか!」


 キリが見つけた川というのはまさに俺の求めていた地だった。川自体はわりと細めのものだが、その川岸には大量の岩がある。


「早速やりますか!」


「はじめは何をするんだい?早速人形作成を使うのかい?それとも―――」


「いや、岩の分別だ」


「………へ?」


「今からするのは多種多様にある岩の分別作業だ」


 どんな岩があってどの岩が製作に向いているか、それを知って最も適した種類の岩を使いたい。


「…………僕はこの周りでレベル上げしてよっかなぁ」


「…お前今、つまらなそうって思っただろ」


「だってつまらないじゃん!岩の種類を調べて何が面白いの⁉︎全部同じじゃん!」


「案外やってみたら面白いって事もあるぞ」


「それまでの時間が無駄でしょ」


「偶には心を無にして黙々と石拾いするのもいいんじゃないか?」


「飽き性なんだ、僕。」


「時にはそう言う事も―――」


「今じゃなくても良く無い?」


「………………行ってくるといい。」


「はいはーい!行ってきまーす!」


(こういうとこだけ実年齢が適用されるの、どうにかならんのかな)


 何をいってもダメだと察した俺は、キリを自由にさせる事にしたのだった。


 ――――1時間後


 それから暫く石の分別に徹していた俺だが、キリが帰ってきた事で作業をやめた。

 この一時間、結論からすると収穫は多すぎるほどにあった。


 まず、今俺が右手に持っている緑がかった石。

 この石は、この川付近にある石の中で最も魔力伝導率が高かったものだ。具体的にどのくらい良いのかというと、潛に使った木材の約三倍は魔力が通りやすい。

 仮としてこの石は『魔導石』と名づける事にしよう。


 次に、面白いと思ったのはこの真っ白い石だ。

 この石は魔導石とは真逆で魔力伝導率が非常に低い。大体、加えた魔力の八割をこの石が吸収してしまう。

 ここで面白いのが、この石は魔力を加えれば加えるほど色付いていくと言う点。どんな色になるかは人それぞれで、キリは黄色、俺がすると透明な水晶みたいになった。

 仮として『魔色石』と名付けよう。


 最後の石は、光を全て吸収してしまうかの様な真っ黒な石。

 この石の特異点は単純で、無茶苦茶に重い。密度が大きすぎる。具体的には、自分の手のひらサイズの石を持つのにキリと俺が協力した上で両手を必要とするぐらいの重さだ。

 『重黒石』と名づける事としよう。


「へぇー、色んな石があったんだね。石なんて興味ないけど。」


「最後のはいらんだろ。で、狩りはうまくいったのか?」


 若干毒舌なキリに尋ねる。すると、キリは満面の笑みをつくって、


「それはもう順調だったよ!オークを二体も狩っちゃったもんね!」


 マジかよ。………恐ろしいな。子供の成長はここまで早いものなのか?もう俺の身体能力超えてるんじゃね?


「おかげでレベルも23まであがったよ!」


「凄いな。俺も追いつかれない様に頑張ってレベル上げないとな」


「安心してよ。今に追い越してあげるから」


 全然安心できねぇーー!




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