第13話

「クグツシ(カイライシとも)?聞いたことない職業だね。というか何語?」


「分からないのも仕方がない。おそらく、俺固有の職業だからな」


「へぇー、すごいじゃん。」


 何だか反応が薄くないか?そこはほら、もう少し驚いたりしてほしいんだけど。


「いやーなんか色々とありすぎて、驚くのに疲れちゃってさー」


 今俺たちは、森を奥に進んでいる。キリが俺の狩りを見せてほしいといったからだ。後ろで騒がれでもしたら面倒なのだが、自分のことに興味を持ってくれるのは素直に嬉しいことだ。


 はいはい。みんなの思っている事は分かりますよ。どうせ俺は女に褒められると鼻の下伸ばしてデレデレする気持ち悪いおっさんですよ。


 だが、反論させてほしい。男は大体みんな―――え?反論もさせてくれないの?

 変態おじさんにかける情けはねぇって?厳しくない?


「俺の職業は言ったぞ。次はお前の番だろ」


「あ、そうだね。僕の職業は、《剣豪》。第二次職業さ」


「ほぇー。《剣豪》ねぇー。…………第二次職業⁉︎」


 今、コイツ第二次職業って言ったか⁉︎


「そ。アレンくんだけが注目されがちだけど、僕も一応第二次職業なんだ。……ただ、《剣豪》って第三職業に転換した試しがないらしいんだよねぇ。それも注目されない理由かな」


「第三職業に転換した試しがない……?それはおかしくないか?職業は内容は違えど、条件がそろえば転換出来るはずだろう。」


「多分、その条件ってのが難しいんだろうね。だから、《剣豪》はよくハズレ職っていわれてるよ」


「ハズレ…ねぇ」


 《剣豪》の第三職業、か。少し興味があるな。


「《剣豪》ってどんな事ができるんだ?」


「大抵の刃物の類は上手く使えるようになるよ。スキルは……見てもらった方が早いかな。ステータス!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 《キリ•レイクス》 Lv.5

 年齢:10

 職業:剣豪

 スキル:二刀流 弱点看破 生活魔法

 HP :102/102

 MP :36/36

 称号:才媛

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 なるほど。やはり接近戦特化の戦闘職だからなのかHPが多いな。いや、俺のHPが少なすぎるだけなのかもしれないが。

 MPに関しては、こうして他人のステータスを目にした事で、俺の魔力量が桁違いである事が確定した。余談だが、今の俺のMP値は約65000である。

 スキルは《弱点看破》と《二刀流》と《生活魔法》。

 おそらく、《弱点看破》が何処をどの角度で斬ればクリティカルが出るか、みたいなのが分かるスキルなのだろう。

 《二刀流》は二刀流の扱いに補正ってところかな。

 《生活魔法》は……よく分からん。

 で、称号には才媛とある。通りで言動が10歳とは程遠い訳だ。


「みての通り、刃物の中でも短刀の二刀流が得意だね。不思議としっくりくるんだ。」


 何というか、普通に強いなオイ。ゴブリン数体くらいなら今のままでも楽に殺せそうだ。


 「―――ゲギャギャあ゛ぁァ‼︎」


「いたな。あれがゴブリンだ。」


「おー!じゃあ狩ってみせて?」


 目を輝かせて俺を急かすキリを横目に、俺は潛と〝視覚共有〟を行う。


「―――繋がった。」


「?」


 しばらくしてゴブリンの元に黒い鼠が飛び出してきた。潛である。潛はそのままゴブリンに魔力弾を撃ち、ゴブリンの上半身を吹き飛ばした。


「はい。こんな感じ」


 キリの方に向き直って俺は終わった事を伝える。キリはしばらく固まっていたが、


「す、すごっ!生き物を使役するスキルかな?それにその鼠、魔法を使ったよね?そんな生物見た事ないんだけど!」


 と、コレまで以上に興奮した様子で尋ねてきた。近いな。だが、俺の作った人形がしっかり生物として認識されている事が分かったのは大きな成果と言えるだろう。


「コイツ、生き物に見えるか?」


「何処からどう見ても、鼠でしょ?少し大きいけど」


「残念。コイツは俺が作った人形だ。」


「え⁉︎えーっと、つまりこの鼠はキミが操縦してたって事?」


「さすが才媛。理解が早くて助かる」


「なるほど。キミの職業、《傀儡師》は自分で作った人形を自分で操縦する職業なんだね」


「まあ、他にも―――」





「グルルルルルルルル」





 突如聞こえた唸り声。


「「………… 」」


 声の方を振り向くと、そこには空間に真っ黒い穴が―――いや!違う‼︎


 あれは生物だ。

 夕日を全て吸収してしまうような真っ黒い体毛。俺たちの何倍もあるであろう巨躯。

 そして―――燃えるような真紅の――瞳。


「黒い……………虎………?」

 俺は弱々しく呟く。


「……Bランクの魔物、ぶ、ブラックタイガー……」


「一応聞くけど、ヤバいの?」


「今動いたら簡単に死ねるよ」


「オーマイゴット……」


 まだ、俺は死にたくないんだが?せっかくの二周目の人生、思う存分謳歌したいんだが?


「運良く帰ってくれるのを願うしかないね」


 お前はなんでそんなに冷静なのかなっ⁉︎

 ブラックタイガーはずっと俺たちを見つめている。喉を鳴らしているのだが、それが甘える方なのか威嚇の方なのか俺にはわからない。出来れば前者であってくれと願う次第だ。

 ブラックタイガーはしばらく俺たちを見つめた後、


 踵を返―――


「グルルゥァ‼︎‼︎」


 こっちに向かって走って来たんですけど⁉︎


「はぁぁぁあ⁉︎ふざけんな!」


「くっ!ダメだったか!」


 ブラックタイガーの引っ掻きを全身全霊で交わした俺たちは背を向けて走り出す。


「このまま、街まで走れば……!」


「ダメだよ!犠牲者が出るのは目に見えている!」


「え、じゃあ何⁉︎戦うのか?アレと⁉︎」


 後ろから軽トラックが走ってきてるようなもんだろうが!


「……せめて剣があれば…!」


「いや、お前のレベルであれは無理だろ!」


「魔物にもHPがあるのなら、擦り傷であってもその値をゼロにすれば理論上は殺せるはず!」


「その前にお前が死ぬっての!」


 くっ!望み薄だが、やってみるしかないか!

 俺は立ち止まる。


「レヴィ!何を⁉︎」


 コイツは俺達を獲物としか見ていない。コレだけ追いかけっこをしているのに、ブラックタイガーに追いつかれていないのが何よりの証拠だ。

 ただ、その傲慢さが俺の勝率を上昇させてんだよ!


 俺は逃げると同時について来させていた潛から魔力弾を放つ。出力は潛で出せる最大の魔力50!


 ―――ギュィィン


 溜める。溜める。


 そして―――発射。


 ―――ドッシュン‼︎


 魔力弾がブラックタイガーに命中し、強い衝撃が走った。回転した魔力の塊が肉を抉っていく音が聞こえる。


「やったかッ⁉︎」


 煙が晴れて姿を現したのは、背中の肉が抉れ、骨が剥き出しになったブラックタイガーだった。

 ―――しかし、その目には紛れもない殺意が、まだ残っていた。


「……さっきのフラグだったかも」














 〈補足〉

 本作でのスキルとはあらゆる技、権能を総合したものです。

 具体的にスキルは、《ーーー》で表され、

 そのスキルに含まれる技や権能は〝ーーー〟で表されます。


 〈例〉

 《火魔法》

 〝ファイヤーボール〟 〝ファイヤーランス〟


 また、《魔力弾》など、稀にスキルに複数の技を含まない場合、すなわちスキル=技である場合には、技名がそのままスキルに反映される事があります。

 主人公の場合、《魔力弾》を行使したとき、魔力を塊にしてうち出すだけであり、魔力自体をスキルというフィルターを経由して加工していない……つまり、主人公本人の技術によるものであるのも原因です。


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