第21話 夜の守護者、再び

久方ぶりに夜の静寂を裂く、ある使命がピットを再び討伐人として目覚めさせた。渚王国の辺境の村で、人々を恐怖に陥れる未知の怪物の報せが届いた。ピットは、平和の守り人としての日々を過ごしながらも、内心では討伐人としての役割への未練を断ち切れずにいた。その使命感が、再び彼の心を動かしたのだ。


仮面を被り、黒装束に身を包んだピットは、夜の帳が深まる中、村へと向かった。静かな足取りで森を抜け、彼はかつて自身が何度も立ち向かってきた闇と対峙する準備を整える。しかし、今回は何かが違っていた。ピットの中には、過去には感じなかった冷静さと、内なる闇との共存があった。


村に近づくと、奇妙な気配が漂っているのを感じ取った。ピットは、自身の感覚を頼りに、怪物の気配を追った。深い霧の中、ようやくその姿を目にする。人々の話に聞いていた以上に、その怪物は巨大で、闇の中でも一際暗いオーラを放っていた。


しかし、ピットはためらわなかった。仮面の下の彼の眼差しは、決意に満ちていた。内なる闇の力を制御し、正義のために振るう方法を、彼は既に学んでいた。ピットは怪物に立ち向かい、その巨体を敏捷にかわしながら、弱点を見極めた。


長い戦いの末、ピットは怪物を討ち、村を脅かす危機から解放した。しかし、彼はその場で英雄としての賛辞を受けることなく、静かに夜の闇に身を隠した。彼にとって重要なのは、人々の安全を守ること。称賛や名声ではなかった。


帰路につくピットの心は複雑だった。仮面を被り、討伐人として闇と戦う彼の姿は変わらないが、彼自身は以前とは違う存在になりつつあった。内なる闇との調和、そして隣国との絆を深める彼の旅は、彼を更に強く、賢明な守護者へと成長させていた。


この夜の出来事は、ピットがただの討伐人ではなく、渚王国と隣国の平和のために戦う真の守護者であることを再確認させるものだった。そして彼の旅はまだ終わらない。夜の守護者として、また平和の使者として、彼はこれからも王国とその民のために闘い続けるだろう。

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