青い鳥 ~青井さんと鳥居君と文化祭~

二年生の文化祭

「とりま、やってみ」


 が、青井さんの口癖。


 演劇。

 うちのクラスは【青い鳥】

 現代コメディにアレンジして。

 俺がチルチル、青井さんがミチル。

 ふだん「青い鳥コンビ」とからかわれていたが。


 文芸部の後藤め。


 青井さんは「ウケる」って前向き。

 俺は失敗したらって、後ろ向き。


「どうしてもイヤならウチも断るけどさ、やったらアガるかもじゃん?」


 青井さんの笑顔にはあらがえない。 

 放課後、二人だけの練習もした。


「いいじゃん、別に。ウチら演劇部でもないんだし」


 期待は裏切れないって硬い俺とは逆に、青井さんは軽かった。


 本番は……。


 とりあえず成功かな?


 本番前、青井さんのほうが緊張していた。

 大丈夫だと、俺は手を握った。

 彼女は驚いていたけど、いつもの笑顔が戻った。


「んじゃま、行きますか!」


 結局、舞台でこけたのは俺のほう。カバーしてくれたのは青井さんだった。

 

 打ち上げではみんな笑顔だった。

 失敗も気にすんなって。よくやってくれた。ありがとうって。

 俺もようやくクラスに馴染んだのかな?

 やってなければ、こんな気持ちにもならなかったか。


「おつかれ~」


 青井さんがドリンクバーで作ってきたそれは……。


「ダメ? でも、それもアガるじゃん?」


 とりま、やってみ。

 それが青井さん……、香織ちゃん。

 俺はいつも彼女のそれにアゲられていた。

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