第5話
指定された人通りが殆ど無い使われてない空き教室に入って適当な椅子に座り待つこと数分、
「悪いな、急に呼び出して」
「暇だしそれは良いんだけど、でも珍しいな。もし、緊急事態とかそんな相談ならオレよりも他を当たった方が良いと思うぞ」
「緊急事態───だとは思ってないな、
「信じてる?」
「あぁ。だって、紅貴は
どうして冴島がオレを呼び出したのか、その理由が判明した。
他の男子に比べ紗代からの信用が厚い冴島はストーカーに遭っているとの相談を受け、そしてその犯人がオレである事を知らされた。
しかし、どうにもオレとストーカーというイメージが結び付かず、こうして直接確認する事にしたという事らしい。
それは分かったけど、当然新たな疑問が湧いてくる。だけど今は自分の無実を証明する事が先だ。
「これを見て欲しい」
言葉で説明するよりも早く、そして確実な証拠としてメッセージのやり取りと──紗代から告白された日の一部始終を収めた動画を見せる。
「妹が撮影してたんだ。万が一があるからって」
男子から人気の紗代に呼び出された時点で怪しさを感じた雪が伝えてもない待ち合わせ場所を見つけ出し、そして撮影した。まさか、本当に役立つ時が来るとは思わなかった。
「良かった、紗代の話が嘘で……。だけど、そっか、付き合ってたんだな」
「誰にも言うなよ」
「言わねぇよ、こんなおっかない事」
少し意外だった。
いくら無罪を証明する為とは言え、紗代に好意を持っているであろう相手に見せるのは酷かと思っていたから。しかし、冴島にはショックを受けた様子はなく、本当にただ驚いているだけのように見えた。
もしかしたら冴島が紗代の近くにいるのは好意からじゃないのかもしれないな。
「でも、だったらなんで紗代はこんな嘘を吐いたんだろうな」
少し考える。
こんな直ぐにバレる嘘を吐いて冴島っていう男子のリーダー的存在をオレに仕向けたか……冴島だからか?
これが他の男子なら殺意を抱き、言い回って集団で問い詰められただろう。だけど、冴島は冷静に紗代だけの話を信じずにオレの話を聞いてくれた。もし、それを見越して、オレらの関係を話すよう促してたなら──雪の話の信憑性が強まる事になる。
紗代からの合図だとこの件を捉え、冴島と一緒に教室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます