どっちが先?

「流れ星が空を流れているあいだに、三回願いごとをとなえると、願いがかなうのよ」


 ミチは、お母さんのその言葉を信じています。

 なぜなら、ゆうべ庭先に、未来からやってきた未来の自分が現れたからです。

 未来のミチは言いました。


「わたしが流れ星に願ったのはね、百歳まで生きることだったの。

 そしたら本当に長生きして、おかげでタイムマシンの発明も目にすることができて、こうして十歳のわたしに会いに来たというわけ」


「じゃあ、あなたは、わたしが流れ星を見る日を知っているの?」


「ええ、そうよ。さっそくこれからタイムマシンに乗って、一緒にその日へ行きましょう」


     *


 二人はめざす日時に到着しました。

 ミチがたずねます。


「ここはいつごろなの?」


「わたし……つまり、あなたが生まれる前日の夜よ」


「えっ? それじゃあ変な話になるよ。

 わたしはまだ生まれていないのに、流れ星を見たことになる」


「そうね。けれど、そのおかげでわたしは長生きして、タイムマシンにも乗れたし、こうして過去の自分に会って、流れ星を見せてあげられる」


 ここでミチは少し考えました。


「どっちが先?

 わたしが流れ星を見ることと、あなたが長生きしてタイムマシンに乗ること……どっちが先なの?」


「あなたはこう言いたいのね。

 卵が先か、ニワトリが先か、という話と同じようなものだって」


「そう」


「それはむずかしいわね。

 だって、このわたしも、未来からやってきた未来の自分に導かれて、これから夜空を流れる流れ星を見たんですもの」


     *


 そして今、ミチはゆうべの出来事を、初めて見た流れ星を、夢のように思い出しています。

 そんなミチは、未来の自分には、あまり多くをききませんでした。


 だって、未来は、何が起こるかわからないほうが、よっぽど楽しみじゃありませんか。


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