③『あの日の面影』藤茂梶海 著(ブランコ)

「もう帰れ!!」会社中に俺への罵声が響いた。俺は今しかられている。理由は分からない。いや、上司であるこいつの八つ当たりだ。今日のこいつはいらだっていた。そんなものは一目見れば分かった。普通なら話しかけないだろう。だが俺は話す必要があった。今日が納期の仕事を渡す必要があったからだ。結果なんて分かるだろう。現に俺は今怒られている。

「分かりました。今日は有休をとらせていただきます」オレは荷をまとめて帰路につく。

 道中ふと公園にある一つの止まったブランコに目がいった。俺はブランコを囲む柵に溜息をつきながら座る。ブランコを眺めて昔を思い出す。「あのころはもっと楽しかったのにな。いつからこんな辛くなったんだろう」と、俺はそんな言葉をつぶやく。

「よっ!! 元気か? 暇ならお前ん家行こうぜ」

 オレはあわてて後ろを振り向いた。そこにいたのは親友だった。「何で? ここに?」俺はそう問う。「せっかくだ、遊ぼう」親友はブランコに乗って漕ぎだした。かつての、懐かしい姿がそこにはあった。

 少しして俺たちは俺の家の前にいた。家で今日は飲むことにしたのだ。大量のお酒を片手に扉を開ける。そこには飾り付けられた我が家があった。

「「「誕生日おめでとう」」」

 さっき怒ってきた上司のあいつもいる。さっきのことについて謝られた。ドッキリだったのだ。俺は安堵すると同時に少し涙を流した。

 そうか、俺は辛くない。俺は幸せだったのだ。この親友とブランコに乗った時から感じた感情は幸せの感情だった。今、やっと俺は気づけた。今度は忘れないようにしよう。


――――――――――――――――――――――

藤茂 梶海 猫部顧問🐈

https://kakuyomu.jp/users/taigahakaziki

――――――――――――――――――――――

最近生きることに疲れている中学2年生です。

主にふぁんたじー系を書いています。

私立カクヨム学園で虹乃ノランさんを部長とする部活猫部の顧問となりました。部員の方はぜひ名前に猫部であることが分かるようにしてください。お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る