第107話 門を!

 王都の戦いは、今や緊迫の極みに達していた。最初に約100体の魔物が門を突破して町の中に侵入した。


 突然門の外から駆けてきたその魔物たちが王都に入る列に並んでいる人々を蹴散らすのみで、真っ直ぐ門の中へ突入していった。


 そこにいた人々に目もくれず、避けきれなかった者が吹き飛ばされ地面を転がり阿鼻叫喚となった。ただ吹き飛ばされただけなので、大怪我をする者が大半だが、打ちどころが悪かった数名が死んだ。


 門の近くに居合わせた冒険者と兵士が必死に抵抗している。


 しかし、あまりにも短時間、それも想定外の襲撃に門を閉ざすことができず、バトルウルフに騎乗したリザードマンや馬のような魔物が町中への突撃を開始した。


 また、門の外にいた人々が泣き叫びながらパニックになり町の中へと逃げ帰り、町は大混乱に陥っていた。


 第二陣の魔物が砂塵を巻き上げながら迫る中、ロイは混乱する人々の中にいたが、何とかかき分け、門へと進んだ。


 ロイは町の中に入り込んだ魔物を無視するしかなかった。


 魔物の角で刺し貫かれた女性を見つけたが、心を鬼にして門の制圧を優先して助けずに向かった。

 一瞥するのみで、苦虫を噛み潰したような顔をしながら一路門を目指したのだ。


 なぜならば、門が魔物の第二陣に突破されでもすれば、すべてが終わるからだ。


 門に近づくと、守備隊が魔物と激しく戦っているのが見えた。ロイは即座に判断し、最大距離からの【魔石抜き取り】を行い、魔物から魔石を抜き取り、形勢を立て直すことにした。


 この魔石抜き取りという作業中は無防備になるため、ミランダやベリーズも周囲の冒険者や兵士へ助太刀できず、10秒間ロイを守ることに集中することになる。


「みんな、10秒間だけ俺を守ってくれ!」


 ロイは叫ぶと【魔石抜き取り】を開始した。


 守備隊と冒険者たちは必死に魔物と戦い、大盾を持ったリラ、同じくベリーズ、ミランダがロイを囲み、ソニアとエリナはロイの傍らで最後の防壁として、つまり肉の盾となってでも守ると杖を構え、魔法を紡ぎ出す。


 ベリーズたちは全力で魔物を食い止めた。


 ロイの手から放たれる光が魔物の体内から魔石を引き抜き、魔石を失った魔物は力を失い、その場に崩れ落ちた。


「もう少しだ、耐えてくれ!」


 ロイは集中力を高め、次々と魔石を抜き取った。


 一度発動すると門へと駆け寄り再び駆け寄り、肩でいきをしつつ門に持たれ体を預けながら魔石抜き取りを発動した。10秒が過ぎた頃、門に迫っていた多くの魔物が倒れていく。ロイは一息つき、門の閉鎖に再び取りかかった。守備隊と冒険者たちの協力で門を閉じ、第二陣の侵入をひとまず防いだ。


 しかし、街中にはまだ暴れる魔物が残っており、次なる戦いが待ち受けていた。ロイは仲間たちと共に門の外の魔物に備え、兵士たちは街中の魔物を一掃するために立ち上がった。これが、彼らの運命を決する戦いとなるだろう。

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