第83話 出立

 ロイは、不在となる期間に必要な材料を用意し(スライム)、メイドに言われた納品と納材する物品の準備を行う。 

 その後メイドから渡されたリストと、用意した現物が一致することを、メイドさんと確認した。

 リストにサインを貰うとソニアの収納に入れていく。


 馬車は8台用意され、ド派手なひときわ立派な馬車にロイ、ベリーズ、エリナ、奥方様お付きのメイドがいた。


 また、外観はワンランク落ちるが、内装が豪華な馬車に奥方様、メイド、メイドに扮したソニア、騎士見習い風のミランダが乗り込む。奥方様もメイド服を着ている。


 これは偽装のためで、盗賊に襲われた場合、真っ先に狙われるのが主だからだと聞かされた。


 残りの馬車は商会が荷物を運ぶのによく使う馬車で、馬ではなくテイムされたユニコーンのような魔獣が曳く。

 作りも堅牢で1台に14名が乗り込み、その二重に耐える堅牢な作りだ。

 但し揺れはすごいので、各自がクッションを用意する。

 この辺りの準備を怠った者は、痔に悩まされるらしい。


 兵士の装備は軽装鎧と、護衛の傭兵崩れの格好だ。ただ、町に着いたらソニアの収納にある鎧にチェンジする。


 エリナがドレスを着込み、ロイは執事服、ベリーズは騎士の着る服を着ており、一見すると貴族の娘(エリナ)が一行の主に見えるよう扮している。


 奥方様のメイド服姿は少し無理があるが、領主が出した条件だった。


 ロイは懐疑的ではあるが、雇い主の意向には逆らえない。

 今回ロイたち硝石の舞は、護衛と納品依頼を受けざるを得なかった。


 特にロイはトラウマから泡を吹いて倒れたくらいだが、逆にそれにより立ち直っており、受けるしかなかった。


 幸いメインの護衛は騎士が率いる小隊が担う。ロイたちは囮と、奥方様の直接的な護衛だ。


 だから最悪の場合、兵士たちを囮にして奥方様を担いで逃げるのも仕事のうちだ。

 騎士と兵士たちとのブリーフィングで、兵士の仕事は死ぬことも含めると言われた。


 もちろん残された家族には手厚い補填があり、それが約束されているので頑張れるのだという。


 宿泊する街の方には先触れが行き、予め宿は取っている。

 今回は奥方様のお忍びに近いので、アステールに到着するまで、偽装を続けることになっている。


 扱いはお嬢様一行に付き従うただのメイド。


 ロイたちが宿の一番良い部屋だが、襲撃を受ける可能性が有り、偽お嬢様のエリナ、護衛のミランダ、荷物係兼メイドのソニアが一つの部屋だ。


 奥方は本物のメイドと同室。


 かなり警戒しているようだが、理由が分からなかった。

 これほど警戒するなら、そもそも行かなければ良いのにと思うが、聞いている理由と、本当の理由が違うのだろうとロイは感じていた。


 それはともかく、騎士や兵士たちは当番で夜通し警戒していたが、酔っぱらいが現れるでもなく、この日は平和な夜でロイは拍子抜けした。





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