第42話



「お兄様、何みてるんですか?」


 戦闘でレベル上げをしながら掲示板を眺めていると、ルルラが首を傾げてきた。


「『リトル・ブレイブ・オンライン』の情報を集めてるんだ」

「この世界のですよね?」

「そうだな。異邦人同士でコミュニケーションがとれる場所があってな。いまはそこで情報収集中」

「私も見てみたいです……」

「見ることはできないかもしれないけど、俺が情報を伝えることはできるな」

「どんな感じなんですか!?」

「えーと……ルルラたんについて語るスレ1、だって」

「ルルラ……たん? それってもしかして、私のことですか?」

「なんか動画サイトで有名になってるみたいだな」

「なんかっていうか、お兄様があげたからじゃないですか!」

「まあまあ……皆ルルラのこと気に入ってくれてるみたいだぞ」

「そ、そうですか……それなら、嬉しいです。お兄様も、私の動画とかは良かったと思ってくれますか?」

「ああ。もちろんだとも」

「えへへ……それなら良かったです」


 ルルラは恥ずかしさはあるようだが、嬉しそうに笑っている。

 登録者数がさっきみたら15000人を突破していたし、この勢いは間違いなくルルラのおかげもあるだろう。

 

 ルルラの相手をしつつ、魔物の首を刎ねつつ、現実世界にいる分身を通じて、掲示板などで集めた情報をまとめていく。

 俺が掲示板を見ているのは攻略情報を漁る目的もあるのだが、それ以外の理由もある。


 動画のネタを探している。他の配信者たちを見てみると、攻略系の動画とか、お得なこととかそういった情報をまとめているものが人気になりやすいようだ。

 もちろんそういったコンテンツについても、俺の色を加えて提供していく予定ではあるのだが、それ以外で俺にしかできない強みを活かしたコンテンツを作りたかっった。


 できれば、『リトル・ブレイブ・オンライン』に密接にかかわるものでな。

 つまりまあ、今みんなが困っている問題を解決できるようなことをするのが一番だと思ったので、掲示板をあさっているのだが、どうやらPKに困っているようだ。


 まあ、空城院とかも絡まれていたのでわかるが、今初心者狩りがかなり問題になっているらしい。

 ……これは、いいネタになりそうだ。

 俺がPKKをしていけば恐らくそれなりに注目を集めるだろう。


 配信か動画であげるかはまだ検討中だが、どちらにせよこれは多少のコンテンツになりそうだな。

 おまけに感謝もされるだろうし、こんないいことづくめはないな。


「よし、ルルラ。今後はレベル上げをしながら、PKしてる奴らをぶっ倒していくぞ」

「PKって……異邦人さん同士で戦うことですよね? それって……普通のことなんですか?」

「別に普通ってほどじゃないけど、楽しみ方の一つとしてはあるな」


 おまけに今の段階だとPKのうまみも多いみたいだしな。

 そうでなくても、そもそも対人戦を楽しむタイプの人たちも多いわけだし、魔物狩りを楽しむ人もいれば、ただのんびりこの世界を旅したい人もいる。


 そして、このゲームを稼ぐための場として考える人もいる。

 そういった様々な思惑が交錯した結果が、今の状態なわけだ。


 皆がそれぞれどのように楽しむかは自由だ。

 ただ、それで初心者、新規が二の足を踏むようなことがあったら、よくない。

 プレイヤー人口が減るということは、それだけ舞の配信を見る人が減る可能性があるというわけだ。

 いやもちろん、ゲームしない人が見ることもあるとは思うが、それは舞のファンが主になるだろう。


 面白いゲームをやっているから見る、という層を取り込んでもらうためにもゲームの注目度は高い状態を維持してもらいたい。

 俺は早速、【ワープ】を発動し、第一の街へと移動した。


 第一の街へと移動した俺は、【偽装者】を使用し、街中を移動していく。

 ルルラにもポケットに隠れてもらい、まずは街の外へと向かう。


 それから、スキルを使って気配を消しつつ、外で様子を伺う。

 ……思ったよりも皆警戒しているようで、ソロで外に出る人はすくない。


 それに、定期的に半裸の男たちが街の外を練り歩いている。

 ……確か、『アサシンブレイク』を退治しているっていう、クランがあったな。

 記憶内で検索をかけると、『マッスルーズ』、『ハムストリングス』の名前が浮かんできた。

 そうそう、この二つだ。


 ただ、それほどレベルは高くなく、『アサシンブレイク』に苦戦することも多い状態だったか。

 街近隣であれば、彼らが対応しているようなので俺はどちらかというと奥地へと向かう。


 周囲の状況をスキルで確認していると、ちょうど交戦中と思われる冒険者たちを発見した。

 そちらへすぐに向かうと、おお、やってるやってる。

 すでに【偽装者】を解除していた俺は、早速両手に短剣を持ち、今まさに赤目の男たちに襲われている彼らの救助へと向かう。

 まずは一撃。【投擲】を発動しながら、短剣を男へと投げつける。


「が!? なんだいきなり!?」


 背中に短剣をくらった男が、体をよろめかせながらこちらを睨んでくる。

 その顔が、驚きに染まる。


「ひょ、ひょっとこ兄貴だ!!」


 驚いた様子の彼らに俺は短剣を振り抜いた。

 叫んだ男を一瞬で仕留めると、襲っていた残り五人がこちらを睨んでくる。


「何がひょっとこ兄貴だ! お前ら、怯むな! やっちまえ!」


 このパーティーのリーダーと思われる男が叫びながら、突っ込んでくる。

 さらに残っていた四人が、魔法と弓を構えて攻撃をしてくるが、それらすべてをかわしながら前三人を仕留める。

 皆、弱いな。動きが単調すぎる。もっとちゃんと殺しあいを経験したほうがいいぞ?




―――――――――――

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