第16話





 坑道ダンジョンは奥に進めば進むほど魔物のレベルが上がっていく。

 ……とりあえず、何本か槍を手に入れたが、これも俺には使い道がないんだよな。


 俺のレベルはすでに23ほどまで上がっていて、ステータスポイントも筋力と敏捷に割り振っているので、まったくもって苦戦はしない。


 坑道ダンジョンは結構入り組んでいるのだが、【鋭い感覚】のおかげで迷うこともない。

 どんどん先に進み、ガイコツ兵をまとめて仕留めていくと……【鋭い感覚】から返ってくる感覚が違った。


 なんか、大広間があるみたいだな。

 そちらの道を進んでいくと、確かにスキル通り、大広間があった。

 その奥にまた道が繋がっているのだが、これは怪しい。

 明らか、ここに何かある感じだよな。わかりやすく言うなら、ボスだ。


 中に入ってから結構進んだし、ダンジョンボスがいても不思議ではないだろう。

 ……一人でやれるかどうかはちょっと疑問だが、称号も手に入っているし、俺自身も強化されているからな。


 やってみるとするか。


 ダメなら、奥の道に逃げてしまえばいいだろう。

 俺は周囲を警戒しながら大広間へと踏み込む。

 ゆっくりと進んでいき、大広間の中央についたところで……足元が揺れた。


 ……地面から、何かが来る。

 そう思った俺はその場で大きく飛び退いた。同時に、俺が先ほどいた場所を槍が現れた。

 そこから、ゆっくりと姿を見せたのは……ガイコツ兵だ。


 いや、通常のガイコツ兵よりも何もかもが一回り大きい。

 頭には王を示すかのように寂れた王冠がつけられていて、右手には巨大な槍が握りしめられている。

 ……ザ・ここのボスって感じだな。


「ガアアア!」


 ……どこから声を出しているのか分からないが、ガイコツキングが咆哮をあげ、さっと槍を構える。

 すぐにこちらへと突っ込んできて、槍を突き出してくる。


 思っていたより速いな。横に跳んでかわすと、すぐに再び槍が迫る。

 速度はまだ俺のほうが上だが、それでも今までの魔物に比べると動きに無駄がないな。

 突き出された槍に短剣を合わせるが、すっと力の向きを変えるように受け流す。


 槍を一度捌けば、懐に踏み込みやすい。一気に距離をつめ、【致命的な一撃】を発動する。

 弱点は人間の心臓と同じか。見れば、他のガイコツ兵とは違い、怪しく光る魔石があった。


 これが弱点か、分かりやすくいいねぇ。

 ついつい笑顔になってしまいながら、俺はそこに短剣を叩き込む。

 と、ガイコツキングが悲鳴のようなものをあげる。


「ガアアア!」


 ダメージに苦しむような声をあげながらも、ガイコツキングが槍を振り抜いてくる。

 攻撃をかわしながら、短剣でダメージを与えていく。

 この調子なら、どうにかなりそうだな。


 そう思った瞬間、ガイコツキングの体が光った。

 ……なんだ?

 そう思った次の瞬間、ガイコツキングの槍が分裂するように振り抜かれた。


 ……スキルか!

 普通ならばあり得ない槍の三連撃を、必要最低限短剣で捌き、致命傷にならない一撃だけを体に掠めながら受ける。


 このスキル、異世界でも似たようなものを見たことがあるなぁ、とかのんびり考えながら、スキル発動後の隙に、俺は両手の短剣を叩き込んだ。


「ガッ!?」


 ガイコツキングが大きく吹き飛ぶ。

 ガイコツキングが体を起こす前に、【音の先へ】で一気に近づいて追撃ダメージを稼ぐ。


 ……そろそろか?

 ガイコツキングがよろよろと立ち上がるが、明らかに疲労している。

 ダンジョンボスは、HPが多いのが厄介だな。ガイコツ兵の十倍は攻撃を叩き込んで、ようやくここまで削れるって感じか。

 でも、やっていることは基本的に変わらない。

 まあ、戦いなんてそんなものだ。いかに自分の得意な攻撃をするかどうかだ。


「ガアアアア!」


 ガイコツキングが叫ぶと、その体からオーラのようなものが現れる。

 ……ステータス強化系のスキルでも使用したのか?

 それを示すように、ガイコツキングの体が加速した。


 普通に対応していたら、このゲームの体では余裕を持って捌くのは難しそうだな。

 ガイコツキングの歩幅、視線、構えから……その先を読み、槍が突き出されたのとほぼ同時に回避、反撃を放つ。


 ガイコツキングは俺の反撃を測していなかったようで、驚いたように槍を構える。

 ……さっきよりもダメージが通りにくくなっている気がするな。

 

 振り抜かれる槍も速く、俺は集中力を上げていって先読みでどうにかやり過ごす。

 ギリギリまで引きつけての回避は、俺にとっても危険だがガイコツキングにとってもそれは同じ。

 ギリギリでかわされれば、大きな隙が生まれるってわけであり。


 ――ここだ。





―――――――――――

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