勇者の不可分 ~記憶の狭間に潜む影~

@tarikin

陽生 光輝

陽生 光輝1話 勇者の帰還

陽生 光輝の目に飛び込んできたのは、かつて知っていた世界の風景だった。その瞬間、胸の奥から懐かしさがこみ上げると同時に、何かが引き裂かれるような感覚が彼を襲った。


記憶の深淵から断片的な映像が浮かび上がり、一気に押し寄せてくる。しかし、それらはぼんやりと遠い存在で、まるで蜃気楼のように掴みどころがない。

自分がここに立っていること自体が信じられず、懐かしさと驚きの狭間で光輝はただ立ち尽くしていた。


「ここは……地球……だよな……」


何が起きたのか分からず、自分が直前まで何をしていたのか必死に思い出そうとする。しかし、その記憶はまるで霧の中にいるかのように曖昧で、手を伸ばしても届かない。


「……確か……ニサはまだ産後間もない状態で……子供たちは……」


「ぐっっ!!」


記憶を呼び起こそうとした瞬間、激しい頭痛に襲われる。まるで身体がそれ以上の追及を拒絶しているかのように、光輝は痛みに耐えきれず、思考が中断された。


その時、不意に大地を揺るがすような破壊音が耳をつんざいた。建物が崩れ落ちるかのような轟音が周囲に響き渡り、耳を裂くような獣の雄叫びがこだまする。

その音には、尋常ではない力と狂気が宿っており、光輝の身体は反射的に構えを取った。

胸の奥にまで響く振動が、戦士としての本能を刺激する。


「やはりレイジオークかッ!!!」


「何故地球に……いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!」


脳裏に浮かぶ疑問を一瞬で振り払い、光輝は戦士としての本能に従い、レイジオークの凶暴な瞳に狙いを定めた。息を荒らげ、目に宿る狂気は、まさに破壊の化身として地上に降り立ったかのようだった。


「ここで止めなければ……!」


一瞬で光輝の身体が消え、次の瞬間、レイジオークの眼前に現れた。風が巻き起こり、彼の魔力が静かに周囲を包み込む。その力は周囲の被害を抑えるために緻密に調整されていたが、その強大さは否応なく伝わってくる。


「地獄の炎よ、全てを燃やし尽くせ!!」


光輝の叫びは、まるで地獄からの使者が降臨したかのように響き渡った。その瞬間、レイジオークの顔に一瞬の恐怖がよぎる。光輝の手から解き放たれた炎が爆発的に広がり、凄まじい熱量がレイジオークを包み込んだ。


「インフェルノ・フレア!!」


轟音と共に炎が巻き上がり、レイジオークは息をする間もなく、その炎に焼き尽くされた。獣の雄叫びはもはや響くことなく、ただ静かに大量の灰が舞い上がるだけだった。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

この物語は光輝、晴斗、勁亮の三人の視点から描いていきます!

もし宜しければ、勁亮、晴斗の1話も読んでいただけたら嬉しいです!

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