第30話 海賊令嬢と海へ④

あらすじ

・イアンside

 船酔い治った(((o(*゚▽゚*)o)))

 頑張るぞ\\\\٩( 'ω' )و ////


・アイリスside

 イアンってどこまでできる子なんだろ……。


・ヒャッハーside

 コーヒーありがとうよ!

 ん? どうした? マティアス?


・モヒカンside

 あ〜やっぱ、気になるか〜


・マティアスside

 お嬢様のメイドとしての仕事をしないと……


◇◆◇

 タッタッタッタッ……。


 アイリス様が船縁の上を軽快に走っている。ボクは甲板を走る。船首からともを往復するという単純なものだが、30分も走ると流石にバテてくる。というのに、アイリス様が疲れている様子はない。どちらかと言うと、とても生き生きしている。初めて出会った時とは違うアイリス様に見惚れてしまう。そのうちボクは疲れていることを忘れてしまった。


◇◆◇

 ドッドッドッドッ……。


 甲板を走るイアンは軽快とは言い難い。あの体型だから仕方がないのだけど、その割に遅くはない。まあ、普通の速さだ。30分走った辺りで疲れが見え始めたが、いつの間にか疲れを忘れて走るのに集中している。貴族にしては、なかなかの体力だと言っていいだろう。努力の割に能力ステータスが伸び悩んでいるという話を聞いていたが、このような形で身になっていることを嬉しく思った。


 そこに……。


「お嬢様、婚約者様。そろそろ休憩してはいかがでしょうか?」


 マティアス、いやマチルダがトローリーにレモネードや朝食を載せて私たちに声をかけて来たのだ。


 ◇◆◇

 い、生き返る〜〜


 メイドさんから受け取ったレモネードを一気に喉に流し込む。気がつけば、1時間以上走っていた。メイドさんが声をかけてくれなければ、倒れるまで走っていたような気がする。


 レモネードを飲んだところで、メイドさんが大皿をボクとアイリス様の間に差し出す。大皿にはおにぎりが載っている。次にお椀をボクとアイリス様、それぞれに差し出す。こちらには味噌汁が入っている。


「船に乗るときは、お米を食べないと力がでないのよね」


 アイリス様がそう言いながら、おにぎりを頬張る。ボクもおにぎりを口にする。

 ………梅干しだ。減塩とか一切考えてない昔ながらのヤツだ! 酸っぱい! しょっぱい!

 味噌汁に手を伸ばす。具はネギ。出汁がしっかりしてる。少し薄味なのがおにぎりに合う……

 。


「イアン。おにぎりも味噌汁も外つ国のものだけど普通に食べるのね。普通の貴族はあまり食べないのだけど……」


 この世界で外つ国と呼ばれている現代日本の和食に分類される料理を貴族階級の者たちは食べないことが多い。格式で劣るとみなされているのだ。失礼な話だとは思うが、後から来たものの扱いとしてはそんなものだろう。


 とは言え、実家ネヴェルス子爵家では割と食べていた。子爵家に和食が好きな先祖がいたからだ。おにぎりや味噌汁も普通に出されていた。前世が日本人のボクにはありがたかった。


「はい。実家ネヴェルス子爵家で食べていましたから……」


「そうなの?私、梅干しが好きなの! イアンは?」


 アイリス様が食い気味に話出す。アイリス様は梅干しが好きなのか……。


「ボクは梅おかかの方が……」


 つい、本音を言ってしまった後で失言に気づく。


「梅おかか? あんなの邪道よ! 梅干しに他のものを付け加えるなんて……!」


「でも、梅の酸味とおかかの旨みが合わさって、とても良いですよ!」


「まあ、梅おかかも美味しいけど、梅干しは梅干し、おかかはおかかが良いと思わない?」


「それも良いと思いますが、梅とおかかのハーモニーも捨てがたいです!」


「まさか、貴方、ツナにマヨネーズをかけたものも好きとか言うんじゃないでしょうね!」


「何で分かるんですか!」


「見てれば分かるわよ! でも、見たそのまんまなんて思わなかった! イアン、貴方にはガッカリだわ! 実家に帰らせて頂きます!」


「アイリス様の実家はここじゃないですか!」


 ここで気づく。アイリス様が笑っている。揶揄われている……。でも、アイリス様が楽しそうだったから、ボクも釣られて笑ってしまったんだ。


 ◇◆◇

「あ〜、こりゃ相性が良いんだろうyo! ヒャッハー!」


 ブリッジで出歯亀しながらヒャッハーのアニキがノリノリになってる。本当にそうとしか思えない。


「でも、アニキ。マティアスのヤツ、ロクでもないこと考えてやしやせんか?」


「ハッハー! そんなもん、オレらがついてりゃ、おかしな事にはなんねーyo!」


 そりゃそうだ。マティアスが使う腐海魔法ってヤツは、三勇者の一人が使っていたっていう、おっそろいヤツだけど、所詮はガキだからな! まあ、何とかなるだろ!


 ◇◆◇

 あのブタに対する認識を少し改める。ただのブタが1時間以上も走れるとは思わなかったからだ。でも、視線がアイリス様の走る姿を追っていたから、根性があるというより助平心だろう。オーク寄りの豚なのかも知れない。


 時計を見ると朝食の時間だったので、おにぎりと味噌汁を持って行く。王都の貴族はあまり食さないものなので、違うものにすべきとも思ったが、あのブタにそんな気遣いは無用だろう。

 と思っていたら、本当に無用だった。まさか、あの梅干しまで普通に食べるとは思っていなかった……。

 しかも、アイリス様とおにぎりの具で言い合いを始める始末……。ブタのくせに生意気な……。しかも、アイリス様は楽しそうにしている……。

 何なんだ? あのブタは? 精神干渉系のスキルでも持っているのか? それなら、精神干渉も得意とする腐海魔法の使い手の僕が分からないことがあるはずがない……。

 もっと観察せねばなるまい。"御子様"直々に与えられた使命を果たすため、アイリス様への忠義を貫くために……。

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