第3話 見えない何か

 痛い。やめて。


 湯気が立ち込める中、いきなり後ろから肩を押され、顔から鏡に突っ込んでしまった。振り返ったけど、このシャワールームには誰もいない。


 最初は、後ろに気配を感じて鳥肌が立ったけど誰もいない。でも、湯煙の中で、人影のような輪郭が見えたような気もする。


 私が、誰にも言えないことの2つ目は、よく、こんな恐怖体験にであうこと。一回死んだのに、生まれ変わったことが関係しているのかもしれない。


 翌日、部屋干ししていた洗濯物を取り込んでいる時、突然、真っ暗になった。停電とは違う。月明かりとか、窓から薄明かりとかは漏れておらず、漆黒で、光が全てどこかに吸い込まれているみたい。



 その直後、急に、右肩が何か強い力で壁に押さえつけられ、左肩も強い力で押された。両肩は、悲鳴をあげるほど強い力で押し付けられていた。



 骨が砕けちゃう。本当に痛い。


 人の息遣いや体温とかは何も感じることはなく、単に肩だけが強く押さえ付けられていている。



 あまりに強い力で押さえつけられ、恐怖で体を動かせないでいると、次に、首を手のようなものでつかまれ、気が遠のいていった。


 気がついたのは1分後ぐらいだと思うけど、ずっと気を失っていたように感じた。これは、気のせいじゃない。首を絞められた跡もある。


 その晩、私は、追いかけられる夢を見た。線路下の細いトンネルで後ろから影が迫ってきて、走って逃げたけど、どこまで走っても、トンネルから抜けることができない。


 何か、黒く湿ったものが足にまとわりつき、急に動けなくなった。恐怖のあまり息ができない。



 私は、汗だくで目を覚ましたの。なんだったんだろう。


 その時、窓のカーテンが揺れた。あれ、窓を開けて寝てたんだっけ? 誰か部屋に入ってくるかもと怯えていたのに、窓を開けっぱなしで寝るはずがない。



 部屋を見渡しても誰もいない。でも、ふと気づくと、足首にロープで縛ったような跡があった。


 このような恐怖体験は度々起きていた。私は、あまりに頻繁に起こるものだから、もう日常のこととして受け止めていて、朝起きたら、気分転換に外を散歩してみることにしたの。


 外に出てみると、気づかなかったけど、いつの間にか春らしい景色になっている。小川の横では、スイセンが咲き、道端にはアセビも咲いていた。


 時折、風が吹き、私の長い髪の毛と、白いレースのスカートがゆれる。私は、遊歩道で木々の枝から漏れる陽の光を見上げ、暖かさを感じていた。


 そして、わずかな時間だけかもしれないけど、心落ち着くひとときを味わっていた。ずっと、こんな穏やかな日が続けばいいのに。


 芽衣とも、笑顔で付き合えているから、そう思えるのかもしれない。本当に、芽衣のおかげなんだと思う。芽衣は、これからもずっと大切にしていくね。

 

 だから、芽衣もずっと私の親友でいて欲しい。

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