第13話 隣国のセルバン共和国へ

 シエナ国を無事出国できるとお隣のセルバン共和国に入国した。


 私にとって初めての国外だった。


 なんたって光魔法を持つ深窓の令嬢だったからね。国外流出なんてとんでもない。


 これからはあの令嬢が私の代わりになるのだろうか?


 もしかして、あの子も光魔法を持っていたかもしれない。


 聖女とか言っていたものね。聖女教会と関係あるのかもね。


 まあ、今の私にはもう関係ないけど。


 途中何日か、馬車での野宿だったけれどあの仕様だから、普通の宿に泊まっている気分だった。


 だって、個室有り、台所兼だけど食堂有り、トイレや浴室は共同だけど有るんだもん。


 それにあの幌馬車仕様になってからほとんど揺れもない。


 どういう構造なのだろう?


 今度お尋ねしてみよう。でも、理解できるか分らない。


 アイテムボックスのスキルをお持ちだから、その理論の応用とか言ってたけどそんなことできるんだ。


 道中は流れゆく景色を個室から眺めて優雅な旅行でもしている感じだった。


 国外追放なんだけどね。レイノルド様は行く先を決めているみたいだし。


 私もどこかの冒険者ギルドにでも登録しよう。


 時折、アドニスさんが様子を尋ねに来てくれた。


 お料理の用意やお掃除も手伝わせてもらったので退屈することもなかった。


 こちらの調理方式を学んでおけば一人になって自炊する時に助かるよね。


 隣国に入国する際には私達も馬車から降りて入国審査を受けたけれど、レイノルド様が衛兵にカードらしきものを取り出して見せた。


「身分証を拝見します。ええとレイノルド・バーンズ。冒険者のクラスは、え、B級? 商業ギルトのクラスは金ですか!」


 衛兵はレイノルド様のカードと顔を繰り返し見ていた。


「大変失礼いたしました。それではご同行の方は?」


「俺の商隊の職員のアドニスとアゼリアです。身分証はありません」


「そうですか、分かりました」


 レイノルド様の言葉に衛兵は何かを書きとめていた。

 

「それでは、バーンズ商会のレイノルドさんとアドニスさん、アゼリアさんでよろしいですか?」


「ええ、そうです」


「それではバーンズ商会の方で入国金は支払われておりますのでこのまま入ってください」


 既にレイノルド様は冒険者や商人としてご活躍だったらしく、彼の身分証を見せるとそれだけでほぼスルーに近いものだった。


 今まで王宮で表にでなかったのは冒険者とか商人として働いていたのかもしれない。


 そんな王子様は見たことないけどね。


 リーダイ様なんて勉強さえももろくにしてなかった。ああ、あんな人と比べてはいけなかったわね。


 それにしても私には身分証なんてなかったから助かった。やっぱり冒険者登録をしておこう。


 それにレイノルド様は商業ギルドにも加盟してるのね。


 それもとんでもないクラス。どれだけ有能なのかしら。


 普通なら入国の際はお金を取られるのだけれどレイノルド様のお陰で何もいらなかった上に審査も簡単に済んだ。私なんて身分証がないのに。


 レイノルド様と別れたら身分証は必要よね。


 確か、冒険者なら誰でも申請できるはず。手っ取り早く身分証を手に入れられる。


 冒険者ギルドというところで冒険者登録すると誰でもなれるはず。


 ギルドは大きく三つあり、まず冒険者ギルド、これは冒険者が主に集まっている。武力を用いてモンスター討伐や住民の依頼を請け負う人達だ。


 それ以外に商業ギルドがあり、これはレイノルド様も加入している商人達の集まりだ。売買や流通を管理している。


 それと生産ギルドがあって、これは農業とかの生産業に従事している人達の集まりだ。


 後は聖女教会が魔法使い達を束ねていた。


 これらは世界共通で運営されていてそれぞれが不可侵領域となっている。

 

 ギルド内は国家間の争いや権力は持ち込まないことになっていた。まあ、多少の癒着はあるだろうけどね。


 私がなろうとしている冒険者にはランクがあり、AからGまでの七段階で依頼の成功数や難易度などでランクが決まる。最初はGからだ。


 そして登録ができると身分証のカードを与えられる。これにモンスターの討伐数や依頼の成否などか表記される。


 体内に収納可能なカードでモンスター討伐は中には命を落とした場合これで所在の代わりとなるものだった。


 因みにDランクが一番多く、Cランクになると国などから指名依頼がくるらしい。


 Aは世界でも魔王を退治できるレベルと言われ、世界でも数人程だそうな。


 実質Bクラスが実戦部隊の最強として現場で活躍している。一応A以上のSクラスも存在するらしい。


 そんな説明をレイノルド様からしてもらった。さすがにお妃教育ではそこまで習わなかった。


「少し買い足したいものがありますので、この国で泊まりましょう」


 レイノルド様がそう言って慣れた感じで幌馬車付きで泊まれる宿屋に入った。


 部屋は三人一緒の部屋だけど、多分皆、幌馬車に寝泊まりする。


 勿体ないけど安心して幌馬車を置けるところが必要らしい。


 だって個室の寝室にキッチン、バス・トイレ付きだもの。下手な宿屋より幌馬車の方が設備が良い。


「じゃあ、それぞれ休憩しよう。アゼリア嬢はどこか行きたいところはある?」


「あの、私は冒険者登録をしたいのでギルドに行きたいです」


「あ、ああ。いいよ。でも、ここではなく。次に立寄る予定のサンガ帝国で登録しないか?」


「え? ええ、レイノルド様がそうおっしゃるなら別に急ぎませんけれど……」


 私の答えにレイノルド様は安堵した表情で、


「じゃあ、ちょっと買い物にも行こうか。食材や君の着る物が必要だよね。その後は俺もギルドには納品に行く予定があるから」


「でもレイノルド様はお忙しいのでは?」


「まあ、追手がきたら心配だけど必要な物も手に入れないと行き詰まるからね」


「そうなんですね」


「まあ、俺達はシエナ国から追われている。充分気をつけていこう」


 レイノルド様の言葉に頷いた。

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