奇祭の街

ジャック(JTW)

血はトマト、臓物はデコレーションケーキ(前編)

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 縄を持って獲物を探している途中、道に迷った旅人は、偶然にも背徳の街に迷い込んでしまった。


「なんだここは!?」


 街はどこを見渡しても血だらけで、臓物を鷲掴みする人々があちらこちらに潜んでいる。旅人は当初の目的を見失い、恐怖に震えながら、逃げ出すことしか頭になかった。


 街の中心部には、不気味な灯篭がたくさん並んでいた。その灯篭からはじわじわと赤い光が漏れ出している。


 そして、街の住民は首のない姿で歩いている。彼らは何者かによって首を切り落とされ、そのまま街に放り出されているのだ。旅人はそのな光景を見て、思わず吐き気を催した。


「ひぃっ」


 旅人は逃げることしかできない。街の出口を探し、必死に走り抜ける。しかし、真っ赤に彩られた街の中は迷路のように入り組んでおり、逃げ場を見つけることは容易ではなかった。



 さらに旅人は街の住民に追いかけられていることに気づいた。旅人を見つけると、まるで何か呪いの言葉でもかけようとするかのように蠢き、近づいてくる。


 どこに逃げても首無し住民がいる。幸い、首無し住民の歩みはそこまで速くないとはいえ、そのうち人海戦術で狩られてしまうことは想像に難くない。


 しかし、どんなに追い詰められても旅人は諦めなかった。常備薬を吸うことで恐怖に打ち勝ち、街の出口を見つけるために必死に走り続けた。



 そして、ついに旅人は、出口を見つけた。まるで祭りの会場のように飾り付けられてはいたが、外部に開けたそこは確実に通行可能だった。


 やっと旅人は街から脱出──

 しようとしたが、出来なかった。


 首無男デュラハンの群れが旅人を取り囲み、旅人が護身の為に握っていた拳銃を叩き落とす。


 旅人は首無男達に揉みくちゃにされながら暴れた。

「ふざけるな! 首無し共! 離せ! 離せ! ちくしょう!」と旅人は半狂乱で叫んだが、拘束が緩むことはない。

 そこで旅人はようやく気づいた。首無男どもは、皆そう見えるように仮装していただけで、ここは化け物の街などではなかったのだ。



 そして旅人は、警察に逮捕された。




(後編に続く)


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