第45話

学園内で、以前も話したが美丈夫が服を着るとだろうというマチアスに、な中性的美人のカナメは社交界の白薔薇デボラ”の息子だと思わせる容姿。

王太子とその婚約者としてではなくても、はっきり言おう、とても目立つ。

婚約者として発表される前だって二人を見てうっとりため息をつく男女──同性にその息を吐かせるのは主にカナメだったが──がいたのだけれど、婚約式の後からは余計に増えた。


外行きの顔のおかげでバレていないけれど、カナメは増えた視線に居心地が悪いなあと思う瞬間ばかりが増えた。

カナメはもとより「俺、目立つの苦手なんだよね……」という性格をなんとか奮い立たせ、マチアスの側近候補──表向きは──の一人としてマチアスの隣に立っていた。

この時だってかなりの視線を浴びていたのに、今はそれ以上の視線がバシバシと当たる。泣いていいなら泣きたいほどだ。

それを悟られない涼しい顔でこの姿。彼の努力が見てとれる。

それに対して

(鈍感なの?それとも王族の血のなせる技?幼少期からの教育……いや、教育はほとんど俺、アルと同じのをアルの隣でやってた。え……じゃあこれ、これは王族の血か、性格ってこと?ほしい……その性格、ちょっと分けてほしい。ずるい。神様は不公平にしすぎるよ……)

カナメはどんな視線さえ全く気にしない、何とも思っていない様子のマチアスを本気で尊敬していた。

尊敬半分、ずるいと思う気持ち半分くらいかも知れないが……。



学舎と学舎とつなぐ渡り廊下。

渡り廊下は屋根こそあるが外を歩いているようなもので、あたりの様子がよく見えた。

セキュリティの観点から背の低い、それこそこの世界の一般的な令嬢の膝よりも下──────、踝程度の高さまでしか育てないようにしている低木の緑が陽を浴びて葉を鮮やかに輝かせている姿も目を楽しませてくれるし、庭師が丹精込め月替わりで植え替える花壇の花はいつだって誇り高くその姿を学園生に見せていた。

遠くの方には背の高い木々が見え、この渡り廊下からそちらを見る景色の美しさに魅せられ、ここからの景色を絵にした生徒は多い。

中にはその絵がきっかけで、画家の道を歩んだ生徒もいたというほどだ。

また、卒業生の中には自分の屋敷に同じような景色の庭を作るものもいるほど、この渡り廊下の景色は優美で人を魅了した。

そんな渡り廊下に、マチアスとカナメ、この二人がいるのが確認できる。

彼らの背後には従者アルノルトとアーネの姿が。この二人も学園の卒業生、きっとこの景色を見て美しいと思ったこともあっただろう。


「きれい」


ぽつりとつぶやいたカナメに、そうだなと言ったマチアス。

けれど彼が見ていたのは庭ではなく、隣を歩く婚約者である。




今までこの学園に同性の婚約者同士が通っていたこともあれば、のちの女王が同性の婚約者と通ったことなど、同性の婚約者たちが同時期に通っていたこともあるし、また今現在そういう婚約者も在籍している。

この国では同性婚が認められている国なので、異性との婚約と同じく、時には「なんなのこの」という花やらハートやらが婚約者たちもいれば、当然冷めた仲の婚約者もいた。

そしてマチアスとカナメ。

この二人は距離がある婚約者に見られている。

他者に、そう、正しく他者に、表向き側近候補として隣にいた時と同じような距離感を感じさせているようだ。

二人はそんなつもりが一切ないのに、そう思わせる。これはきっと長い時間ふたりが婚約していたにも関わらず、それを知られぬように悟らせないように付き合っていたからだろう。

このどこか感じる距離感を在籍中の学園生から聞いた、いまだに娘や親族から側妃を出そうとしている当主は夜会などで自身もこのを確認をし、自信を持ったのか。

なんと二人の距離感にををみて、自分の欲望を娘や親族の子に託しこれを匂わせ、時にははっきりとマチアスにしてくる慮外者も現れる。

それは主にあの、『匙加減が絶妙な書簡』を送りつけてくる当主であった。


この面と向かって、実に分かりやすく側妃を提案され喜んだのはマチアス。


獲物が飛び込んできたという喜びを全て両眼に乗せ、それが籠った眼光が人に向けるような者ではない鋭さとなり、相手を突き刺す。ここで慌てて謝罪しようとも無駄である。

「自分の主義主張のためなら王族をどのように使ってもいい。そう思っていることがよくよくわかった」この程度ならまだ本当に本当にマシな方で、あまりに不敬な相手には

「自分が法律だと言うようなその態度から察するに、国を作りたいと見える。今すぐ国外へ出るといい。思う通りの国が作れていいだろう。あとで国王陛下に伝えておくが、問題はあるまい?王太子である私をと見ているのだ、自分と同じかそれ以下のものだと思うからこその発言だろう?いや、それとも私は不勉強ゆえ知らなかったが、もうどこぞかに国を作ったのか?だから我が父である国王や王太子である私にそのようなができる。あとで国王陛下に聞いておかねばなるまい。新しい国ができたそうだが私は知らなかったと」

なんて息継ぎなしで一気に言ったこともあった。

送った書簡の内容でマチアスの発言も大きく左右されると知り、熱りが覚めるまで大人しくしておけばいい思ったものもいたが、そういう奴こそ舌の根も乾かぬうちにと言うそれをする。

平然と、いや、今までの思考が正しいと思いそれが当然と思うからこそ、マチアスを罵り、それを聞いていた息子らに当主の座を追われ田舎に追いやられたものもいるそうだ。

追い出したものの真意はわからないが、このままでは家がなくなると思ってのことだというのだけは見てとれる。嫡男思想があるかどうかは別として、危機感は十分に持っているのだろう。

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