第31話 イダテン現る!! 魅惑のチキチキわくわく大レース!!レース編

早速俺はその辺に転がっている大きめの石を探す。

転倒で曲がった右ステップを直すためだ。

あったあった!

ちょっと大きめの石をその重さを利用して曲がったステップにぶつけて真っ直ぐに直す。

ガン!ガン!

シートに跨ってステップの位置を確認!

「よし!これで良い!!」


バルッ!バルーン!!

エンジンも1発始動だ!!

「よぉーしっ!!リベンジだ!!」

掌を拳で叩く!

アドレナリンが出まくってるぜ!!


「リオン!どうする?魔法で『スイスイスーの力』を使う?」

アフロヘアーのアローラが駆け寄りヒソヒソと囁く。

「いらねぇーっっっ!!

アイツは俺の実力でぶっちぎる!!!!」

今度は真っ黒焦げのトム爺が

「リオンよ。交換用のミラーじゃ」

ブフッ!!

「お…おう。サンキュー!トム爺…」2人揃ってその姿で、しかも真顔で話しかけてくるもんだから手を口元に当て笑いを堪えるのに必死だ。

横を見るとナルシスも背を向けて笑いを必死に堪えている。

お前ら俺に恨みでもあるのか!?

上がりまくった俺のアドレナリンを下げないでくれ!!


スタートラインに並ぶイダテンと俺達。


イダテンは手足をバタバタさせ、いつでもスタートできるように気合い十分だ。

俺とナルシスも負けちゃあいねえ!

ゴーグルを掛けるとカブのギアを1速に入れ、いつでもアクセル全開だぜ!


アウト側にイダテン。

イン側に俺とナルシスが並ぶ。

スッとその前方にチェッカーフラッグを持ったアフロアローラが凛と立つ。

その格好をつけた姿とアフロヘアーを見た途端、ブフフッッッ!!と笑いが吹き出しそうになるのを必死に我慢する。

アイツ〜!!絶対今度仕返ししてやる!!

アローラはまるでレディースの総長の様に肩にチェッカーフラッグを掛けて啖呵を切る。

「あんた達!用意は良いかいっ!!

走るからには生半可な気持ちは…」

「もうええから!はよスタートしてくれッ!!!!」我慢できずにツッコミを入れた途端、バサァッッッ!!とスタートのチェッカーフラッグが振られた!!


「嘘だろ!?こんなスタートあるか!!!!」

一斉にイダテンと俺達はスタートしたがツッコんでいた分、俺は完全に不意をつかれて出遅れた!!

「ちくしょう!!やられた!!(アローラに)」


砂煙を上げながらイダテンを先頭にナルシス、俺と続く!

12階層の最終コーナーまでは大きな坑道の様になっており、ぐるりと岩肌に囲まれている。前にも言ったが、天井や壁にはヒカリゴケやオオホタル、ヒカリクラゲ等の成分を調合した夜行塗料ソラリスが塗られているが、この階層辺りになると少し光に陰りが出てくる。コースとしては大小様々なカーブがあり、当然ストレートもある。


クネクネとしたカーブにヘアピンカーブに入ると獣走法のイダテンが驚異的なスピードで駆け抜けていく!

4本足で砂煙を上げながらカーブを駆け抜ける様はまさに四輪駆動だ。

俺達も後タイヤを滑らせながら必死に着いていくが、もともとこの峠道はイダテンの縄張りだ。オーバースピードでも峠道を囲む岩肌と地面を三角跳びの様に駆け抜けていき、俺達は少しずつ離されていく。

だが、イダテンは知らない。

モンスターには無いスーパーカブのスピードを!!


S字カーブを抜けると長い直線が始まる。

そこで俺とナルシスは一気に加速する!

いくらイダテンの足が速いと言ってもどこの世界に時速80㎞以上のスピードで走り続けられるモンスターがいる?


俺達のこの世界じゃスーパーカブこそモンスターだ!!


バルルルルルーッッッ!!!!

次の左コーナーに向かうストレートエンドでナルシスと俺がイダテンに並んだ!

俺たちを見て仰天のイダテン!


左コーナーの入り口で俺とナルシスはシフトダウンと同時にアクセルを吹かしエンジン回転を上げながらコーナーに突っ込み、立ち上がりでイダテンをかわす!!


続く右コーナーではナルシスのインを突き俺がトップに浮上した!!

一瞬で一気に順位が入れ替わる!!

俺、ナルシス、イダテンの順位になり、予想していなかった出来事にイダテンは唖然とし、それは怒りに変わった。

炎のように赤い目がさらに赤く光る。

地面をその鉤爪で力強く蹴り出しグングンとスピードに乗せて俺達に並ぶ!

カーブに入るとダンジョン外側の岩肌を三角跳びを利用して俺達を一気に抜き去りイダテンがトップに返り咲くが、続くストレートでは俺達が前に出る!


イダテンに追いつかれてから10分程経ち、コーナーのイダテン。ストレートの俺達。のパターンが生まれてくる。

そして、このデッドヒートが繰り返される度に俺達とイダテンの間に戦友のような感情が沸々と湧いてきた。

イダテンと目が合うと炎のように赤い目がニヤリと微笑む。俺達も笑みを返す。

ゴールの12階層入り口までもう僅かだ。


ゴール手前の最後の勝負所、90度右直角コーナーが見えてきた!!


人間の本能は基本的には食欲や物欲、性欲といった「欲」が大部分を占めている。そしてもう一つそれに並ぶものがある。

どんな臆病者でも小さな子供でも、それは大なり小なり様々だが必ずある人間の本能。人間の本質。

負けたくない。勝ちたい。

それは「闘争心」だ。

モンスターも例外では無い!

荒ぶる3人の闘争心にさらなる火がつき

3人の負けたくない気持ちがスパークする!


「「「勝つのは俺だッッッ!!」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る