第29話 イダテン現る!! 魅惑のチキチキわくわく大レース!!中編
勢いよくスタートした4台のカブは砂煙を上げながらゴールの12階層入り口へ加速する!
「おおっと?真っ先に飛び出したのは?
やはりこの2人!リオンとナルたんっ!!その後ろにおじいちゃんとアロっち!!誰がこのレースに勝ち、『魅惑のわくわくディナーペアチケット』を手に入れるのかーっ?」
ニンジャの背中におぶさりながら実況中継のギャルの声がみんなの耳に付けてる通信具に響き渡る!
ニンジャはギャルを背負って、峠道のコースを使わずに、俺達のレースを見ながら森林をショートカットして進む。
思いのほかハードな道をギャルを背負って走るニンジャはほとんど半泣きだ。
「へっへっへ!結局はナルシスとの一騎打ちになるのは目に見えてるぜ?」とアクセルを全開に俺達2人は走り抜く!
ん?
「ブツブツ…ブツブツ…」とアローラからなんか聞こえてくるぞ?
「ブツブツ…大地の神よ!お力借ります!!どんな道もなんのその!!出よ!スイスイスーッの力!!」
ピカーッッ!!とアローラのクロスカブの前後のタイヤが眩しく光った!!
「レースはこっからよ!!」と、アクセルを全開にアローラのクロスカブがコーナーを駆け抜ける!
バックミラーに映るアローラが猛スピードでコーナーに入る!
「バカ!そんなスピードじゃ曲がりきれねえぞ!!」
その俺の叫び声を嘲笑うかの様にアローラのクロスカブがどんどん近づいてくるではないか!?
「おーほっほっほっ♪
大地の力を借りてどんな道でも転けない様にしたのよ!!」
きったねえ!!なんて奴だ!!
「ハハハハ!!
飽くなき勝利への執着心!
それもまた美しい!だな!!」
とナルシスは笑いながら、さらにアクセルを全開に俺に並ぼうとする。
「させるかよ?ナルシス!!」
と、俺も負けずに次のコーナーに向かってアクセルを吹かす!!
それにしても意外なのはトム爺だ。
少し俺達より離れているが、ピタリと3位のポジションにいる。
さすがカブを発掘し、日々その整備に明け暮れてるだけはある。
若い者には負けないと言っていたが、どうやらブラフでは無さそうだな。
運動神経抜群のアローラはイカサマ魔法のおかげもあり、俺達との差を詰めてくるが毎日カブに乗っている俺やナルシスには敵わない。少しずつだがやはり差が広がりつつあった。
と、その時
俺は何かを聞いた。
そして、微かだが何か得体の知れないモノを感じ直感的に「ヤバイ」と咄嗟に走行ラインを横にずらす。
ドヒューンッッッ!と何かが俺の横をかすめた!と思ったら
ドドーンッッッ!!!!と前方の岩肌が爆発する!?
「な、な、な、なんだッッッ!!!」
驚愕の表情で俺とナルシスは爆発し、燃える岩肌を横目に走り抜ける。
「ブツブツ…」
なんだ!またなんか聞こえたぞ!?
さっきの殺気を感じて咄嗟にラインをずらす!!
ドドーンッッッ!!
目の前で炎の爆発が起こりその爆煙を俺達は潜り抜ける!
「なんだよ!?一体!!」必死に後ろを振り向くと…
必死に小さな杖を俺たちに向け呪文を唱える者がいた!!
「ブツブツ…お借りします!炎の神よ!出よ!炎の力!!ファイアーバレット!!」
「お前かーいッッッ!!!!!!」
一斉にアローラにツッコむ俺達!!
基本的に俺達の世界の強力な攻撃魔法はご存じ歌って踊って好きな人の名前で発動する。
だが、それだと咄嗟に身を守る為の攻撃魔法が使えない。
そこで考えられたのが、30cm程の護身用魔法杖だ。
攻撃力こそいつもの魔法よりは効果が下がるが、それでも人1人は倒せる力はある。当たったらたまったもんじゃない!!
「お前!何考えてんだよっ!!
そんなの当たったら下手すりゃ死ぬぞ!!」
「オーホッホッホッ♪
だ〜いじょーぶ。だいじょーぶよお?
死なない程度に弱めてあげるからぁ♡
安心して当たりなさぁい?♡
ウフッ♡…ウフフフフ♡…」
ヤバイ?目がイってるよッッッ!!
「アローラ!美しく無いぞ!!
もっと冷静になれ!!」
さすがのナルシスも動揺を隠せない!
「イ・ヤ・よ! 絶対そのチケットは私が貰うんだからッッッ!!」
と、駄々っ子顔でブンブン腕を振り回して杖を降りまくるもんだから、ビュンビュン無造作にファイャーバレットが飛び散る!あぶねーッつうの!!
バチーンッッッ
「ぎゃあっっっ!!
何すんじゃっ小娘が!!!!」
なんと、アローラが出したファイヤーバレット(火の弾丸)が見事トム爺のお尻に命中!!
慌てて火を消すとトム爺の怒りモードもMAXだ!!
「小娘の分際でっっ!!」
魔法を使えるトム爺も当然短い杖(ショートスティック)を持ってるわけで…
「借りますじゃ!!大気の力!!ライトニングアローッッッ!!!!」
ピッシャーッッッンンン!!!!!!
「アガガガががガガガビビビビ!!!!」
見事に感電するアローラ!!
アローラにまさにトム爺のカミナリ「雷の矢(ライトニングアロー)」が落ちたのだった。ハハハ!自業自得だぜ!
「よくもやったわねえ!?
このクソジジイが!!
ファイヤーバレットッッッ!!」
「クソジジイだと!?
小娘の分際で!!
ライトニングアローッッッ!!」
ドドーンッッッ!!
ピシャーッッッンンン!!
ありゃ?俺達の後ろでアローラとトム爺の不毛な魔法争いが始まったよ?
よし、この隙にさっさとゴールに向かおう!
あいつらこの後いくつカボスを食うのだろう?
「あーっとお!
アローラっちとおじいちゃんが魔法で戦いだしたよ!?
どーなってんのこれ!?
その隙にドンドン前に進むリオンとナルたん!!
もう、こりゃ優勝争いはこの2人だね!!」
ギャルの実況中継も熱が入る。
********
レースは11階層まで進みまさに俺とナルシスとの一騎打ちになった!
だが、11階層に来てからずーっと得体の知れない視線を感じる。
アローラでもトム爺でも無い…
なんだろう?
左コーナーに差し掛かったその瞬間!大きな得体の知れないモノがイン側にいる俺のさらにイン側に割り込んで、並び掛けてきた!!
さっきから異様な気配を、視線を感じていたのはコイツか!!
とてつもなく速いスピードで走り回り、大きく赤い目を持ち、スリムで茶色い大きな体の獣。
モンスター『イダテン』だ!!
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