魔法少女たちとオペラ座の怪人
第2話 魔法少女サヨナキドリ
「止めなさい。」
私の背後から、少女の高らかな凛とした声が響いた。
声の主が誰か確認するために振り向くことはしなかった。その声は、すでに何度も聞いていた、非常に馴染み深いものだったからだ。
私はその指示に従って手を止めることもしなかった。
高い場所から吹く風に身を任せ、体重をかけて手に持つ糸を引っ張る。錬金魔法で特別に作られた糸が、廃墟のビルに露出した鉄筋を跨いで、荷重を支えるブロックを引き上げるためにピンと張りつめた音を立てた。
私の目の前には異形がいた。
人間のような細長い四肢、外見の黒い皮膚、そして道化のような顔。額には小さな角が生え、背中には力のない黒いコウモリの翼が生えていた。
化け物の悪意を含んだ目が、今やうつろになっている。銀色の糸が奴の首に巻きついており、私が体を沈める動作に合わせて、徐々に締め付けられていた。
「言ったでしょう、やめて!」
私の背後で、少女がヒステリックに大声で叫んだ。後頭部に涼しさを感じ、私は急いで身をかわした。
白銀色で、雪のような小さな粒子が舞う投げ槍が、私がいた場所を直撃し、異形の胸を貫いた。
黒い塵になって風に舞い散る異形を見ながら、私は手に持っていた糸を解いて、身体の左半分とマントで右手の動きを隠しながら、慎重に右の太もものホルスターを外した。
私は笑顔を作り、振り返って少女を見た。
「そんなに邪魔しなくてもいいのに、いつもこんなに追いかけてくるなんて本当にやりすぎだよ。それに、後ろからの奇襲は感心しないわ。君だって正義の魔法少女様でしょう?『
私の背後には、雪のように白い少女がいた。
少女は高く伸びた白いポニーテールを持ち、戦闘服のようなドレスを着ており、シンプルな青のレースがそれを装飾している。ふわふわのミニスカートから伸びる細長く美しい白い足は、同じ白を基調とした長いブーツを履いている。
少女の仔猫のような青い瞳は上を向き、立てられた柳眉から怒りを感じることができる。少女のドレスからは、魔法のような雪の結晶が舞い上がっており、横には狐のような白い生き物が浮かんでいる。
廃墟となった、鉄筋がむき出しのビルの屋上で、風に揺れる少女の衣服は、神秘的な雰囲気を漂わせ、まるで絵画のようであった。
「……『
少女はかすかに背を反らせて、右手は腰に添え、左手を前に伸ばし、突撃態勢を取った。しばらくすると、雪が舞い上がり、彼女の手の間に銀色の長槍が形成されたんだ。
「今日は必ずあなたを捕まえる。」
「ふふ。」
気がつけば、私はもう軽く笑っていた。
「君にはできるかな?」
「……」
「……っ!」
一瞬で少女が間合いを詰めてきた。槍の先端に目を凝らしながら、後ろに身をそらして避けたんだ。槍が戻る隙に引き金を引いたけど、弾丸は弾かれた。槍の脇を蹴り上げて攻撃をかわしつつ、銃を少女の眉間に向けた。少女はすばやくしゃがんで攻撃を避け、再び槍を振り上げた。銃を盾にして攻撃を防ぎつつ、数回のやり取りの後、跳び退いて少女との間を取った。
「...錬金。」
私は銃を持っていない左手を上げて、魔力を集めた。
「させない!」
少女が私が詠唱してるのを見抜いて、突っ込んできた。でも、それはただのフェイントだったんだ。手を高く挙げた後にガツンと振り下ろすと、カチッという小さな爆発音と共に、灰黒色の粉が現れて、私たちの視界を完全に奪った。
「またこの手か!」
少女の怒号を無視して、私は仰向けにビルから飛び降りた。ビルが急速に遠ざかる風景の中で、少女の派手な白い衣装が星のように輝いていた。
「ああ、やっぱり面倒くさいな。」
落下する時の風を感じながら、私は思わずため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます