ノート

西野 うみれ

プロローグ

 先に入ってて、と言われて居酒屋に一人で入るのはなんだか嫌な気分だ。もう三十三にもなるんだから、いい歳した大人なんだけど、なんだか不安になる。


 もし、来なかったら、一人でチョット食べて少し飲んで、連れ来ないんでって、店員さんにも言って、帰る。あぁ、考えただけでもめんどくさい。早く来いよ、優子。


 優子とよく待ち合わせする居酒屋だが、一人で来たことはない。ざっとテーブルが十ほど、あとはカウンターに椅子が五つ。焼き鳥のイイにおいがする。とりあえず、ネギマとモモをタレで、あとはビールにしとくか。


 店の引き戸がガラガラっと開く、店員の「いらしゃーせ」の歓迎の発声が響く。

沢田優子さわだゆうこが店に入ってきた。仕事帰りなのにいつもと服装の雰囲気が違う。どこか、かしこまったような、康太こうたは違和感を感じていた。

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