第22話 二階層

 昼食を終えて、俺はすっかり元気が出た。

 ミレットに分けてもらった昼食は素晴らしく、いつかサオリママにも食べさせてあげたい。


 ミレットは長い距離を歩いて疲れていたらしく。

 座ったことで、かなり休まったと言っていた。


 ミレットのMPは、回復しているが、残りはファイヤーボール七発ほどだ。

 午後はなるたけ戦闘を避けて、二階層へ行ってみることにした。


 俺はダンジョン一階層で、スキル【気配察知】を使いホーンラビットを迂回しながら進む。


「こっちにしよう……」


「ユウト。さっきと道が違いますよ?」


「大丈夫。こっちを通った方が魔物に会わない気がする」


「そうですか……それなら良いです」


 ミレットがジトッと俺を見るが、スルーだ。

 ウチのパーティーの主力はミレットで、主力の攻撃手段はファイヤーボールだ。

 ミレットのMPが全回復していない以上、余計な戦闘は避ける。


 一回だけ、ホーンラビットと戦闘になったが、危なげなくホーンラビットを下した。

 俺もレベル2になったので、ホーンラビットの突進を楽に止められるようになった。


 この調子なら二階層も大丈夫じゃないかなと、ちょっと楽観する。


「ミレット! 二階層へ下りるよ!」


「行きましょう!」


 俺が先頭に立ち、二階層への階段を下りる。


 二階層は……。

 一階層とまったく同じだった!


「同じだね……」


「同じですね……」


 俺とミレットは、『二階層に到達!』、『新人で一番のり?』なんて盛り上がっていたのだが、一階層と同じ光景を見て感動が薄れてしまった。


 気を取り直して二階層の探索を始める。

 ミレットは二階層の地図も持っていたので、三階層へつながる階段へ向けて歩いてみることにした。


 スキル【気配探知】に感アリ!

 右の通路に何かいるな……。


 俺は唇に指をあて振り向く。

 ミレットに『シーッ!』とジェスチャーを送る。

 ミレットも同じジェスチャーを返してくれた。


 足音を立てないように、そっと歩いて通路の角から右の通路をのぞき込む。


(いた……ゴブリンだな……)


 ゴブリンは、十三歳の俺たちより背が低い。

 緑色の肌。

 醜悪な顔。

 短い角。

 汚い布を腰に巻き、右手にナイフを持っている。


 俺はゴブリンを観察しながら、戦い方をシミュレーションする。


(あのナイフは危険度が高いな。盾でガードして、剣を突いて近づけないようにしよう)


 俺は軽く動いて、シミュレーションした動きを確認する。


 ミレットにもゴブリンを見てもらう。

 小声で打ち合わせだ。


「どう? ファイヤーボールは効きそう?」


「大丈夫です! 護衛のシンシアに聞いてます!」


 ミレットの護衛を務めるシンシアさんは、元冒険者だ。

 助かるな。

 シンシアさん相手に予習をして来てくれたんだ。


 さすがミレット!


「じゃあ! 行こう!」


「はい!」


 ミレットがギュッと杖を握った。

 俺は左手に盾、右手に剣を持ち、一度深呼吸をした。

 ミレットに目を合わせると、ミレットがコクリとうなずく。


 俺はダンジョンの通路を曲がり、ゴブリンに向かって走り出た。

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