第13話 パーティー結成
実習は続いた。
三パーティーが順番に戦い、タイソン教官が指導をする。
なかなか勉強になるなと俺はありがたく感じた。
だが、ジャイルのパーティーは、上達していない。
ジャイルが主役になろうとして連携が上手くいかないのだ。
俺たち見ている側は大分余裕が出て来て、戦っているジャイルのパーティーについてあれやこれやと感想を述べていた。
俺はミレットとジャイルのパーティーについて話す。
「ジャイルは体が大きいから盾役になった方が良いと思う」
「そうですね……。ただ……、うーん……、ジャイルさんは、お人柄が……」
「知り合いなの?」
「ええ。まあ」
ミレットは、眉毛をへの字にして困った表情をした。
ミレットがジャイルを好きじゃないのは、見ていてわかる。
ただ、付き合いをゼロにすることは難しい相手なのかな?
「親同士が知り合いとか?」
「そんなところです」
ミレットは『様』付けで呼ばれていた。
どこかのお嬢様なのだろう。
親同士の付き合いがあるなら、ジャイルを邪険に出来ない。
十三歳の女の子としては辛いだろうな。
自分の好みでない男の子につきまとわれるのだから。
「あっ……」
「ようやく倒せましたね……」
ジャイルの振り回した剣が、ラッキーパンチになりホーンラビットは消滅した。
「この勝利を! ミレット様に!」
ジャイルは毎回これをやっている。
独りよがりに戦って、独りよがりに決めポーズをぶっ込んでくる。
さすがにシラーッとした空気になって来た。
タイソン教官もサジを投げてしまい腕を組んで無言だ。
ミレットは毎度のことに内心ウンザリしているに違いない。
けど、ミレットは性格が良いのか、立場上仕方がないのか、毎度笑顔を貼付けている。
「ミレット。本当のところどうなの?」
俺は小声でミレットに聞く。
ミレットも小声で答えた。
「ジャイルさんは……ちょっと……」
「独りよがりというか、強引なところがあるみたいだね」
「そうですね。もう少し周囲に気を配っていただけると嬉しいのですが……」
気配りか。
確かにジャイルには足りてない。
いや、十三歳の男の子なら仕方がないのか?
「とにかく近づけないようにするから」
「お願いします」
結局、この日は各パーティーが五回戦闘を行った。
ホーンラビット五匹を討伐し、ホーンラビットの魔石を五つ手に入れ、討伐ポイントは五になった!
地上に出ると陽はもう傾いていた。
ダンジョンを出て城塞都市トロザへ向かう。
この後、冒険者ギルドで手続きをして解散だ。
俺は歩きながらミレットに礼を述べた。
「ミレット。今日はありがとう。おかげで一人にならないで済んだよ。助かった!」
ホーンラビットは、ダンジョン一階層の最弱の魔物だ。
俺一人で戦っていたらどうだろう?
盾でホーンラビットを防ぎながら、剣で止めを刺す……。
正直、出来ないと思う。
魔法使いのミレットがいたから、俺が盾役、ミレットが攻撃役と役割分担をしたから五匹倒せた。
だが、このパーティーも冒険者ギルドで手続きが終れば解散だ。
俺とミレットのパーティーは、研修中の臨時のパーティーなのだから。
残念だが仕方がない。
俺は自分の気持ちを率直にミレットに伝えた。
するとミレットは嬉しそうに笑顔で答えた。
「私もユウトさんとパーティーを組めて良かったと思っていました。私たち連携も良かったと思うのです。明日以降もパーティーを組みませんか?」
ミレットの意外な申し出に俺は驚く。
「えっ!? 良いの!? ミレットは良い家の子みたいだし、俺みたいなスラムの子供とパーティーを組むのは不味いんじゃ? それに俺は外れスキルだよ?」
ミレットはニコリと笑って答えた。
「わたくしは色々な人と交流をしたいのです。スラムの存在は知っていましたが、スラムにお住まいの方とお話しするのはユウトが初めてです。スラムの人は礼儀知らずで怖い方だと噂を聞いていましたが、ユウトは違いましたよ」
「ああ、まあ、その噂は間違いじゃない。俺はスラムの中ではまともな方だけど、中にはヒドイヤツもいる」
「そうなのですね。わたくしは今ユウトが話してくれたようなこと。色々なことを知りたいのです」
「そうなんだ」
物好き?
いや、それとも良家のお嬢さんが社会勉強を真面目にしているのかな?
俺をスラムの住人だからと目の敵にしないのは、本当にありがたい。
ミレットは話を続けた。
「それから……スキルの件ですが……ユウトが授かったスキルは、どんなスキルなのでしょうか?」
俺は少し迷ったが、ミレットにスキルの名前だけ教えることにした。
「スキルは【レベル1】というスキルだよ」
「レベル1……聞いたことがありませんね……。それは外れスキルというよりは、未知のスキルなのではないかしら?」
「!」
驚く。
ミレットは、鋭い視点をもっている。
十三歳とは思えない。
こんなに賢い子なら、ぜひ一緒にパーティーを組みたい!
「わたくしは、ユウトには可能性があるということだと思います」
「ありがとう! ミレット! じゃあ、明日からもパーティーを組もう! よろしく!」
「こちらこそ! よろしくお願いします!」
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