第11話 知らぬが仏だった!
俺たちは《メスガキのカギ》を使い関所の奥にある扉を開けて、海峡にかかる橋を渡りポルティオ王国へとやってきた。
「あんたらが勇者パーティー?♡ ただのおっさんにババアじゃん♡ ねぇねぇ、どのくらい引きこもってたの?♡ 30年? それとも40年?♡ いや、それ以上か~♡」
早速城に上がりポルティオの女王であるアクメス3世に謁見したのだが、これがまたじつに香ばしいメスガキだった。見た目はJC2~3くらいだろうか。
「ま、それはともかく~、お前らがガチな氷河期と見込んで頼みがあるんだけど~♡」
そう言うと、アクメス3世がおもむろに股ぐらからおもちゃを取り出した。
おい、何てところから何てモノを取り出すんだよ!
「へ、陛下! そのおもちゃ、50000ゴールドでワシに売ってくだされ!」
興奮したヤライソがいきなりそんなことを言いだした。
ちょ、ジジイ、いくらなんでもそれは無礼だぞ! ていうかお前、そんな大金を持っているのかよ。
「あはは♡ おもしれージジイじゃん♡ あたしの頼みを聞いてくれたら別にこんなのあげてもいいよ♡」
そこでアクメス3世の頼みというのを詳しく聞いてみると、どうやらそのおもちゃに満足できないから新しいおもちゃを手に入れてきて欲しいということだった。
そして新しいおもちゃを持ってきたなら、俺たちを勇者パーティーと認めて、大海を自由に行き来できる船を与えるそうだ。
「船なんかいらんわい! それよりさっきのおもちゃをくだされ!」
駄々をこねるヤライソをどうにかこうにかなだめて、俺たちはアクメス3世の頼みを引き受けることにした。
「あ、そうそう、東の洞窟にティンカースっていう引きこもりおじさんがいるんだけど、そいつにこれを渡してやって♡」
アクメス3世は穿いているパンツをもぞもぞと脱ぎだした。
「ティンカースにこれを渡せば、洞窟の奥にあるくぱぁの扉を使わせてくれるから♡」
女王の話によると、そのおっさんにくぱぁの扉の管理を任せていて、パンツを渡せば通してくれるという。
「おっさんには三日間穿きっぱなしだからありがたく思えって伝えといて♡」
「何っ!? 三日間……だと??」
アクメス3世の言葉にヤライソが目を血走らせた。
怖い、怖いってジジイ……。
こうして俺たちは、女王の依頼を引き受けてそのパンツを預かった。
「コドージ殿、トヨーコ、二人にちと話があるのじゃが……」
謁見の間を辞したところで、ふとヤライソに呼び止められた。
「さっき女王から預かったパンツじゃが、その……、ワシにくれんかのう?」
思いつめたような真剣な顔つきで話を切り出してきたから何ごとかと思ったらそんなことかよ!
「いやこれは、女王からティンカースっていうおっさんに渡すために預かったものだぞ。しかも、これがないとくぱぁの扉も通してもらえないみたいだし」
「それはわかっておる! そこでトヨーコに頼みがあるのじゃが、お前さんのパンツを10000で買い取ろう。そしてそれを女王のパンツとして渡せばいいじゃろう」
このジジイ、そこまでして女王のパンツが欲しいのかよ。ヤライソにとって、生脱ぎなのと三日間穿きっぱなしというのがよほど刺さったのだろう。
「あたしは別にいいわよ。でも10000じゃムリね。20000なら手を打つわ」
「何じゃと!? 馬鹿も休み休み言え! ババアのパンツに20000も出せるものか!」
確かにババアのパンツに20000はいくらなんでも高すぎる。でもジジイ、あんたこの前砂漠で死にかけた時、このババアのピー(モザイク音)に50000払おうとしてたよね?
「そう、ならこの話はなしね。あたしだって生活がかかってるんだから!」
「ぐぬぬ……。わかった、なら15000でどうだ? これ以上はびた一文出せぬ!」
両者とも一歩も引かぬ激しい交渉の末、17900ゴールドという何とも微妙な値段で妥結したようだ。それでも高すぎるけどね。
その後、ポルティオ城の東にあるティンカースが住むという洞窟へ行ってみると、その中にこれまたいかにも氷河期が引きこもってそうな小部屋を見つけた。
俺は一応のマナーとして静かに部屋のドアを開けてみると、幼女くらいの等身大の人形に抱き着きもぞもぞと動いている男を見つけた。
どうやらお取込み中のようなので、またしても俺は武士の情けとばかりに数分待ってから部屋に入った。
「私はティンカース。ここでくぱぁの扉を管理している者だ。ここを通るには女王陛下のお許しが必要である。それがないなら通すわけにはいかぬ。早々に立ち去るがよい」
ティンカースは俺たちと同じ氷河期の臭いがする男なのだが、何よりも目を引くのはその容姿だ。
パンイチ姿にネクタイを締め、顔にはパンツを変態〇面のようにして被っている。穿いてるパンツや被っているパンツはアクメス3世からもらったものだろうか。こいつは中々に上級者だ。
「女王の許可ならもらってある。その証拠にこれを預かってきた」
俺は懐から厳かにパンツを取り出すとティンカースに手渡した。
「ん? 女王陛下のおパンツにしてはサイズがちょっとデカいような気がするな。しかもこのようなけばけばしい下品なパンツを穿くだろうか」
ティンカースが手にしたパンツを見て早速不審がる。やっぱりトヨーコのパンツじゃムリがあるって。
「くんくんくん……うぉおえええええっ!! な、何だこの強烈な臭いは!?」
臭いを嗅いだティンカースが涙目になりながら叫んだ。マズい、このままだとばれてしまう。
「こんなのは女王陛下のおパンツではない! 貴様ら、一体これはどういうつもりだ!?」
「いや、それは紛れもなく女王陛下のおパンツだ! 陛下は俺たちの目の前でそれを脱いで直接手渡されたのだからな!」
「ならば、この鼻が曲がりそうな強烈な悪臭はどう説明するつもりだ? これまで陛下から賜ったおパンツは、どれもメスガキの匂いがする麗しい香りだった。だがこのおパンツは、まるでババアの汚物のような悪臭がするではないか!」
あぁ、まさにその通りだ。俺は心の中でそうつぶやき、ティンカースのその鋭い勘に舌を巻いた。だがここまで来たらゴリ押すしかない。
俺はティンカースの首根っこをつかんでそっと耳打ちした。
「おい、謹んで聞け。女王陛下からの伝言だ。このおパンツは三日間穿きっぱなしだからありがたく思えとな」
「なっ!? み、みみみ、三日間穿きっぱなし……だと!?」
ティンカースはその言葉で納得したのかパンツを押し戴いた。そんなので納得するなんて、三日間穿きっぱなしというのはかなりのパワーワードだな。
女王のおパンツだとすっかり信じ込んだティンカースは、トヨーコのパンツに顔面を埋めてスーハースーハーしている。
見ているこっちは吐き気を催してくるが、まぁ知らぬが仏というやつだな。
そしてなぜだか得意げな顔をしたヤライソが、俺に向かってサムズアップしてみせた。くそっ、何か腹立つわこのジジイ。
こうして俺たちはトヨーコのパンツを女王のおパンツだと偽り、無事にくぱぁの扉を通り抜けることができたのだった。
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