僕のキャトルヴァンディス。

猫野 尻尾

第1話:やって来たメイド。

短編です。(=^x^=)


カッコいいのに、可愛い・・・熱いのに、クール・・・。

言葉はなくても、そばにいるだけで、それだけで心が癒される・・・。

それが僕のキャトルヴェンディス。


僕の名前はピーター・ワイズランド。


某有名学園に入学したばかりの高校生・・・。

入学当時は学校にも通っていたが、今は通っていない。

いわゆる登校拒否の閉じこもり。


歳は17歳、中肉中背、背は168センチ・・・。


母親は僕が物心つく前に、この世を去っていて今は父親とふたり暮らし。


父親は某有名銀行の偉い地位にいる人・・・らしい。

なにをやってるのかは僕は知らないし、教えてもくれない。


父親は毎日忙しくしていて、僕が学校へ出かけてた時、家を出る前に、

先に仕事に出かけて行く・・・そして帰ってくるのも、僕が寝てから・・・。


父親とはたまの休みの時、顔を合わす程度だった。

だから僕の面倒は、年配のホームメイドさんが教育係兼食事の世話をして

くれていた。


運動が苦手だった僕は自分の部屋にとじ込もってはいつも本ばかり読んでいた。


そんな楽しくもない暮らしに夢も希望も持てなくて、いつしか僕の心は

少しづつ歪み始めた。

笑わない・・・起こらない・・・感情をすべて殺した少年。

父親と会っても、ろくに返事もしない。

言葉も交わさない・・・。


そんな僕を不気味に感じたのか年配のメイドさんはキミ悪がって辞めてしまった。


誰ともコミュニケーションを図らない根暗な僕のことを父親は心配した。

メイドさんがいなくなって不便だったが、僕は寂しいとも孤独だとも思わなかった。

心が冷めていたんだろう。


父親に見放されたように暮らす僕の心の中に少しづつ、雪のように降り積もって行く

悲しみや苦しみ・・・妬み、憎悪、孤独、寂しさ、切なさ・・・悪魔はそういう感情が好きらしい。

そんな心の闇を餌にしようとある夜を境に僕の部屋に悪魔がやってくるようになった。


それはいつのことだったろう。

僕がまだ子供頃、夜、自分の部屋のベッドに寝転んでひとり本を読んでいた

時のこと。

向かいの壁のところにシミみたいな黒い模様が現れたと思ったら、それは、

少しづつ人の形に変わっていった。

いや・・・人?みたいに見えただけど、それは人じゃなかった。


最初に僕の前に悪魔が現れた時はさすがに驚いたが、その悪魔はなにかを

する訳でもなくただこう言って去っていった・・・。


「俺はベルゴルス・・・おまえがもう少し、大きくなったらおまえの、

その心の闇をもらいに来るからな」


って・・・。


僕は悪魔に心を乗っ取られて、空っぽになって抜け殻になって生ける屍に

なるはずだった。

でも、僕にはキャトルヴァンディスと言うメイドさんがついていたんだ。


最初の悪魔が現れた次の日だった。

ひとりのメイドが僕の家を訪ねてきた。


不思議なことにキャトルヴァンディスが訪ねて来た日に限って父親がいて、

僕の世話をしてもらうのに丁度よかったと、父親は身元ももろくに調査も

しないで彼女を雇った。


父親は彼女を僕に紹介した。


「はじめまして、私の名前はキャトルヴァンディスって言います」

「よろしくお願いしますね、ピーター・・・」


彼女は普通のハウスメイド用の黒い服じゃなく、真っ白なメイド服を

身につけていた。

そして首から下げた小さな十字架は・・・十字架と言うより、それは

小さいけれど剣の形をしていた。


悪魔って白いものを忌み嫌う・・・もしかしたら魔除けの意味があって

彼女は白い衣装を身にまとってるのかなって僕は勝手にそう思った。


僕は、はじめて彼女に会った時その美しさに、近寄りがたい雰囲気を感じて

ただただ見とれてしまって何も言えなかった。


潤いのある優しげな瞳、彼女は、どこまでも色が白くて透き通るように美しくて、

まるで精霊のよう・・・。

もちろん精霊なんて見たことないけど・・・。


その日以来キャトルヴァンディスは僕に勉強も教えてくれながら甲斐甲斐しく

世話をしてくれるようになった。

余計なことは一切言わないし、彼女が見せる微笑みは僕にとって癒しになった。

僕がわがままを言ったり、聞き分けのないことを言っても彼女は、しかることもなく

いつでも優しく接してくれた。


キャトルヴァンディスは僕より4つ年上のお姉さんだったから、僕は彼女に姉と言うより母性を感じたのかもしれない。


僕はいつしかキャトルヴァンディスにだけは心を開くようになっていった。

彼女の前でだけは僕は思い切り笑えた。


つづく。


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