第4話
義姉視点 過去編
私は優に命を助けられた。
その日は、運が悪く妹も修学旅行で家に居ない。父親は特に不機嫌で、私への暴行がいつもより酷かった。その日は一度だけ悲鳴をあげて、死を覚悟した。顔がいつもより怒りがあることが分かり、私はその家から逃げ出した。逃げる際に父親が私が閉めた扉にぶつかり時間をほんの少しだけ稼げた。
逃げること精一杯で悲鳴を上げられなかった。
後ろから父親が追ってくる。そして、ついに倒れそうになった。その時に、優が間に入った。
まだ小学生くらいの彼には力が無く、当然父親に一方的にやられたが、警察を呼んでいたらしい。
関係ない人を巻き込み大怪我をさせてしまったことにショックを受けた私は泣いてしまった。
そして優は私に言った。
「警察を呼ぶ番号・・・覚えてて良かった。」
私は思わず、その歳なら覚えてて当たり前だろと思ってしまった。
母親は既に亡くなっている。妹と私は警察に引き取られて、事情を聞くために優の両親もやって来た。
ーーーーーーーーー
現在
彼に助けられてから私は彼に尽くそうと思った。だから、例え彼がダメでも、むしろ私にとっては彼が依存してくれる方が心地よかった。
「俺これから就職を考えようと思います。俺の頭なら、難しい作業とか出来ないので、給料が低いことを覚悟して同じことを繰り返す仕事を探そうと思います・・・これからは迷惑を掛けないように頑張ります。」
「それは駄目!」
私は思わず反応してしまった。
優は迷惑を掛けるようなことは全くしない。今回のような勉強に関わることについてのみ自分たちが心配になるだけで、彼は迷惑を絶対に掛けようとしない。むしろ私にとっては迷惑を掛けて欲しかった。
「でも、今回のことで散々迷惑をかけてしまいました。」
義弟にはもう少し、私に迷惑を掛けて欲しいし反感を感じて欲しい。
「義弟は、そもそも、駄目駄目だから生きるだけで迷惑。」
「・・・ごめんなさい。」
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