第5話 知ってた

 ブラルはベテランに付いて行った。二人は人気のない裏路地で足を止めた。


「単刀直入に聞くが、お前魔族だろ」


 いきなりの発言にブラルは動揺する。 


 Sランクのベテランはブラルが魔族だということを気づいていただからこそ、大勢の前ではなくわざわざ裏路地まで呼んだのである。


「俺に大人しくついてきたということは、街の中心で暴れるというよりはスパイか何かか?」


「”名目上は”そうなっている」


「ふん、まるで重大なことを隠してるようなやつの発言じゃね〜か…ん?」


 ベテランはブラルの異変に気付いた。







 ブラルは笑っていた。満面の笑みだった。


「っ、ありがとうございます。やっぱり人類は野蛮ではなかったのですね。」


「どういうことだ」ベテランは唐突なブラルの意味不明な発言に警戒する。けれど、話が気になったので武器には手を着けなかった。


「魔族の間では『人類は邪悪だ』と教えられるのですが。僕は人類のいい部分も見てしまいました。その後、人類に興味を持ったので、スパイをすると皆に嘘を付き、実際の人類の生活を見ようとしたのです。そして、あなたは僕に十分勝てる実力があるのに問答無用に斬りかかるのではなく、しかも僕に気を使って人気のないところに移動してくれました。だから野蛮でないと言ったのです。」


 ベテランは驚いた、それは、ブラルが人類に好意的だというところでもなく、ブラルが同族を騙しているというところでもなく、「魔族の間では『人類は邪悪だ』と教えられる」というところであった。なぜなら…







 人類の間では『魔族は邪悪だ』と教えられる

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