第19話
「よお、シン。一緒にこのクエストやらねえか」
カフェで過ごした日から数日後、俺は一躍有名人となっていた。
仮面をつけた上にフードを目深に被った不審者は見つけられやすく、ギルドでCランクの討伐依頼を受けに行くとほぼ毎回パーティーの誘いを受けていた。
今は少し落ち着いてきて、割りの良いクエストを取ったパーティーが誘ってくるだけになってくれた。
まあ、この凶悪犯面したライオンの獣人は会えば必ず声をかけてくるが。
「やらない。今は誰とも組む気はない。いい加減に諦めてくれ」
「だが、このクエストは募集が八人の護衛任務だ。お前1人じゃ受けれんだろ。このクエストだけなら別に構わんじゃないか」
「その手のクエストなら気が向いたら勝手に受ける。誰かの誘いでやるつもりはない。大体お前と俺が護衛任務なんざ受けたら相手が嫌がるだろ」
「がははは!確かにお前の格好は印象はわりーだろうな!
だが、俺等は評判がいいんだよ。それ位なんとでもならぁな。まあ、気が向いたら来てくれや」
いや、評判とかの話じゃねーよ。
言うだけ言って、誘っていたライオンの獣人が愉快そうに仲間のもとに立ち去っていく。
かなりの強面だが、気っ風の良い奴等だ。アイツ等とはもう少し落ち着いたら一緒に仕事をしてみるかな。
毎回お世話になっている受付嬢の元にクエストの紙を持っていく。
「おはようございます。今日はどのクエストをお受けになりますか?」
「このレッドオーガの討伐を頼む」
受け取った紙を視た受付嬢が、少し困った顔をして確認をしてきた。
「こちらのクエストはCランクの方は複数人での受注が推奨されています。
もし依頼の失敗をされた場合は相応のペナルティが課せられます。
更に如何なる損害が出た場合もギルドが保障する事はありませんし、ギルドに対して不利益が出た場合は損失の度合いに応じた請求とペナルティを課しますがよろしいでしょうか」
「大丈夫だ。これを受ける」
「…承りました。
このクエストはクロエム村に最近出没するレッドオーガ単体の討伐となっております。詳しい話は依頼主の方からお聞きください。
なお、クエスト完了後はこの書類に依頼主からサインをお受け取り下さい。この書類にサインがない場合は、報酬を受け取る事が出来ないのでお忘れの無いようにお願い致します。
それでは、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
受付嬢は少し考えた後に、難易度の高い討伐クエストを受けることを受理してくれたので、早速ギルドから出ていく。
「クロエム村ってどこにあるの?」
『確か、北門を出て一度分岐を東に進んだ後は道なりに馬車で5日程の所にあったよ』
「分かった。じゃあ、いつも通り走りながらクロエム村に行くか。ここら辺は道がしっかりしているから走りやすくていいよな」
『領主が頑張ったおかげだね。何が必要か良くわかっている』
「それじゃあ、領主の為にも道中の魔物も駆除しつつ討伐依頼をしっかりこなして恩を返すとするか」
『ふふ、また盗賊と間違われて逆に討伐されないように気を付けてね』
「それなら、装備を替えさせてくれ」
アルテは軽い感じで言ってきたが、俺にとっては何気に気が重くなることだ。
前回の依頼の最中に魔獣との戦闘で苦戦していたパーティーを助けた後、姿を現したら剣士の人が焦って攻撃を仕掛けてきたので思わず殴り飛ばしてしまい、それを見たパーティーと戦闘になってしまった。
その時は全員気絶させて拘束した後にアルテが全員に回復魔法を使用して、気絶から覚めた後誤解を解くことになったりと大変な目にあった。
『この前の戦闘で君は強くなったけど、あの魔術は周りに影響を与えすぎるから街道や街の傍では不用意に使用できないからね。早々あれに頼らなくても済むようにもっと基礎を鍛えてからにしようか。
それに、不審者に間違われて戦闘になったら相手を傷つけずに制圧する為の対人戦の練習にもなって都合が良いからね』
「直ぐに俺の特訓に話を持っていくのは止めて欲しいんだけど。まあいいや。それじゃ行くとしますか」
最近になってなんとなく分かってきたけど、アルテは俺の素顔をさらしたくないらしい。
何を考えているのか分からないけど、アルテに頼ってもらえるように地道に頑張るとしますか。
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