可愛がっていたベランダの小鳥ちゃんが麗しい天使様だった件について。

帆立ししゃも

プロローグ

動物愛護主義者ではない。

別に博愛主義者ってわけじゃない。

でも、僕の暮らすアパートのベランダに毎日やってくるその鳥は、綺麗だったから。

朝の光を浴びて輝く純白の羽根。

潤みがちな黒いつぶらな瞳。

桃色の嘴は小さくて頼り無く、獲物をきちんと捕れるのかすら危うそうだな、なんて思った。

そう、だから毎朝やってくるそいつに僕はパンくずと水をやっていた。

うまいか、なんて声をかけると応えるように羽根を震わせるのが嬉しくて。

晴れの日も雨の日も、そいつとの逢瀬(……と呼べるのか)を繰り返していただけだった、ただの平凡な高校生の僕は、今。


「わ、わたしのこと、好きなんですよね!?その胸にあるのは愛ですか?愛ですよね!せ、責任取ってわたしのつがいになってくださいっ」


白いワンピース姿の美少女に、詰め寄られていた。


いつもの時間。いつもの朝。小鳥のかわりにそこにいたのは、そう、世にも稀なる美しさを纏ったヒト、いや、天使様だったのである。

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