#12

5等のヌイグルミだが、犬のヌイグルミだった。


これは欲しい! が、お土産なので泣く泣く諦める事に。


3等の景品だが、カタログの『高級肉の詰め合わせ』というのにした。


これならポチも満足だろう。


さて、1等の賞品だが、




~~~~~~~


HPポーション


・HPが500回復する。飲むと即効回復、浴びると徐々に回復する。


~~~~~~~




という物だった。


俺、HP35しか無いんですけど……。


10倍以上回復する薬持ってても意味無いわ~。


50回復とかで十分なんだよな。


そうだ! 後でウエダさんの店で買おう。




「お、おめでとう……ございます…………。


 これで福田様は、中級者……ガチャを……引く……権利を…………獲得しました」


「ありがとうございます」




あげたくないんだろうな~。


悔しさを隠しきれてないよ?




「やったな! 師匠! いや皇帝!!」


「お前まで言うなーーーー!!」




俺の左パンチが火を噴いたぜ!


何も装備してないのでショボいパンチだけどさ。




「イテテテ。で、師匠、早速中級者ガチャやるのか?」


「いやいやいやいや、本日は中級者ガチャはメンテナンス中でして!!


 明日以降でないと引く事が出来ません!!


 無理です!! ダメです!! 帰ってください!!」


「段々と、本音が出てますよ? まあ、心配しなくても今日は帰ります」


「ありゅがとうごじゃいますです!!」


「もったいなくねぇか?」


「欲しい物は当たったんだ、いいじゃないか。


 それに明日以降は使えるらしいし?」




そう言ってチラリとエンドウ支配人を見ると、青白い顔になっていた。


スミマセン。




「じゃ、この後はどうすんだ?」


「ウエダさんが何かすればいいじゃないか」


「そういやぁ、昨日から見てばかりだったわ。


 じゃあトランプでもするかな」


「おう、そうしろ。今度は俺が見てる事にするよ」


「やらねぇのか?」


「あぁ。俺の知ってるルールじゃないかもしれないしな」


「なるほどね。見て覚えるって訳だ」


「そういう事」




本当はそんなつもりじゃない。


お金を増やす必要性が無いだけ。


今したいのはレベル上げだよ。






俺達はブラックジャックの店に移動した。


丁度1人分空いてる場所があったので、そこにウエダさんが座り俺は後ろに立つ。


ボーっと見ているが、どうやらルールは前世と変わりが無いようだ。


2~10はそのまま、絵札は10、Aは1か11、ディーラーと対決で、合計の数字が21に近い方が勝ち。


ウエダさんは一進一退してるが、掛け金を変えているので今の所マイナスっぽい。


こういう時、転生モノでよくある『鑑定』能力でもあれば、ウエダさんの運とか見れるのにな。


そういうアイテム無いのかな?




ふと思ったのだが、俺の運って他人には作用しないのかな?


さっきの支配人を例で考えると、


 俺の運を使う→俺が勝つ=俺は幸運


 俺の運を使う→支配人が負ける=支配人不幸


これって間接的には俺の運が作用してるって事にならないのかな?


幸運か不幸かは考え方次第だって事は確認した。


上手くやればウエダさんは、運を使わずに幸運になるんじゃないか?




こりゃ実験だな。


ウエダさんには人体実験の対象になってもらおう。




どう考えればいいだろう?


……こんなのはどうかな?


『ウエダさんが勝てば晩飯が豪華になる! 結果、俺は幸福だー!! 俺の晩飯の為に頑張れ!!』




ウエダさんは突然ブラックジャックを連発し始めた……。


この程度で良いのかよ……。


ならば軽くアドバイスをしよう。


こっそりウエダさんに耳打ちする。




「次の勝負に全額賭けろ!!」




驚いた顔をしつつも、頷く。そして全額ベット!!


結果、あっけなくブラックジャックを出して大勝した。


また放心状態になってるよ……。脳天チョップで再起動かけなきゃ。

「ははは、勝っちまったぜ……」


いまだに半分は放心してるウエダさん。


ディーラーも悔しそうだ。


放って置くといつまでも席を立たないので、もう一度脳天チョップをプレゼントした。




復活したので出ようとしたら、またもや偉そうな人から声を掛けられた。




「私、支配人のオザキと申します。この度はおめでとうございました」


「お、俺は不正なんかしてないぜ?!」


「はい、途中から後ろで見ておりましたので。疑っておりませんよ」


「そ、それならいいんだけどよ……」


「全額ベットの見極めが見事でしたが、キング、いや帝王の知り合いでしたか。さすがです、納得しました」


「「はぁ??」」




俺とウエダさんの声がハモった。


俺は呼び名について。帝王って呼ばれてる!! やめて!!


ウエダさんは、多分俺と同等な事だろう。




「いやいやいや、俺は師匠ほど異常じゃねぇから!!」


「……おい。俺を異常だと思ってたのか?」


「い、いや、そんな事は……ピュ~ピュ~」




目線を逸らして口笛を吹き始めやがった!


コイツ、異常だと思ってたな!!




「なるほど、帝王のお弟子さんなのですか。それなら強くて当たり前なのでしょうな」


「えぇぇぇぇ?!」




俺を師匠なんて呼ぶからだ。自業自得。


でも帝王はやめて。




周辺の野次馬も、それを聞いてザワザワし出した。


「おい、帝王の弟子だってよ!」「帝王は弟子を取ってるのか?!」「俺も弟子入りするかな?」


「口笛吹いて余裕そうだぞ?」「支配人も認める強さか……」「トランプだけにキングって呼ぶか?!」


「いやいや、それは前の帝王の名だろ?」「今帝王だからいいんじゃねぇか?」


「いや混乱するだろ?」「じゃあどうするんだよ?」「キングの下だからジャックでどうだ?」


「ブラックジャックで勝ってるし、ってか?!」「いいんじゃねぇか?」「ジャックだな」「ジャックだ」




おめでとう、ウエダさんはジャックと呼ばれるようだよ。


あっ、聞こえてたのか苦悶してるわ。




「…………じゃ……」


「じゃ?」


「……ジャックって呼ぶな~~~~~!!」




叫んで逃げていったよ。


あっ! 待て! 俺を置いて行くな!!


支配人に軽く会釈をして後を追う。


店を出た所に居たので、合流出来た。




「やったな、ジャック!」


「……その名で呼ぶなら、帝王って呼ぶぞ?」


「さぁウエダさん、帰ろうか!」




ウエダさんは馬車置き場へ向かう途中に、アクセサリーの屋台で髪留めを買っていた。


奥さんへの土産だそうだ。幸せそうでいいですねくそリア充め、爆散しろ。




帰りの馬車の中で、今後の相談をする。




「俺、しばらく行かねぇわ……」


「儲かったから?」


「違ーう! 変な呼び方されるからだよ!!」


「あっそう。これで俺の苦しみが分かっただろう?」


「おう……。あれは恥ずかしいわ……。すまなかったな師匠」


「師匠やめろ」


「それは良いとして、これからどうするんだ?」


「流すな! ……そうだなぁ、またダンジョンでも行ってみるかなぁ?」


「ダンジョンに行くなら冒険者登録した方がいいぞ? メシとか宿とか優遇されるし」


「そういえば、ウエダさんの所に泊めてもらってるけど、いいのか?」


「出てくなんて言うなよ? 師匠なんだから問題ねぇさ!」


「師匠やめろ」


「いくら金持ちでもさ、宿に泊まって金を使わなくてもいいだろ?」


「そうか? じゃあ悪いが世話になるかな」


「好きなだけ泊まっていきな! 師匠!」


「師匠やめろ」




それにしても冒険者か。身分証代わりに登録するかな~。


ダンジョンに行くのに、冒険者を雇うのもいいな。HPが増えるまでは安全策で行かないとね。


村に着く頃には夜になるだろうし、明日にでも行ってみるか。


場所が判らないから、またナミちゃんに案内してもらおう。


ダンジョンに行くのは明後日でいいだろ。


俺にはポチと遊ぶという、重大なミッションがあるのだから!!

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