第17話 神からまた与えられる要らないギフト
「ってことがあってね、蘭ちゃんが……! 悪魔だったのです!」
「はあ……。それは知っていますが、何をそんなに興奮する要素が? 普通、女の子というのは女の子ではなくて男の子にときめくものではないのですか?」
宇都宮さんは酷く困り顔だった。
「何を言ってるの! 今時、男女の違いなんて全く関係ない! いや、私の恋愛対象は男だけどね! でも同性の子にときめくことだってあるんです! 憧れとか、そういうので! 宇都宮さんだって、そういう経験、あるんじゃ……」
「神にそのようなものは無用ですので、ありませんね」
ばっさり切られた私は意気消沈し、座り込む。
蘭ちゃんとの一件の後、家に帰って夕飯をぼーっとして食べて、ぼーっとお風呂に入って、ぼーっとしてたら気づいたら夢の中にいたのだ。
そうしたら、いつものように宇都宮さんが。
ということで、蘭ちゃんについて語ってしまっていた。
「ああ、でもそうやって何事もなかったのはよかったですね」
「え? なんで?」
「宮ノ内家と言えば、それはそれはいろいろやっているお家ですから……。まあ、主に三世代なんですけどね。その蘭さんという方はまだそこまで手を染めてませんが、あまり関わらない方が吉でしょう。いくら、人に好かれるというギフトがあっても」
「それって、どういうこと」
ねえ、私が好かれてる理由って、全てあなたのギフトのせい?
それがなかったら、私、今頃どうなっていたの?
そもそも、あの家に私の居場所はあるの?
私、私……。
「もちろん、神からのギフトでございます。新しいところに慣れるのは至難の業。そのため、こういうものをご用意……」
「要らない。そんなギフト要らない! 何それ。乙女ゲームみたいなんて思ってたら、本当にそういうのなんだ。裏で宇都宮さんが手を引いてたんだ。要らない。そんなの要らない。なくしてよ。私は、私のままでいたいの。偽物の友情とか、恋愛とか、大嫌いなの!!」
「それはそれは……。出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした。はい。消しました」
「え、消した!? 早くない!?」
「ええ。ギフトを消すというギフトを。というのは冗談で、ただのサービスです。でも、あなたを見る好意的な目が、変わりますから。それだけ気を付けてくださいね」
好意的な目がなくなったら、私どうなるんだろう……。
ちょっと怖い。
ううん。でも、こんなの間違ってる。
人の気持ちを動かすようなことは、きっとやっちゃいけないこと。
だから、時間がかかってもいい。私は私なりにいろんな人と仲良くなっていこう……。
「もうそういうギフト、勝手に贈らないで。ありがた迷惑だから」
「承知しました。さあ、もう朝です。それではいってらっしゃいませ」
人のことを、人間を、何だと思っているのだろう。
でも、宇都宮さん……、少しだけ傷ついたような顔をしていたかもしれない。
私、間違ったこと、してないのに……。
ううん。今は気にしないでいよう。
大丈夫。私は、一回死んでるから強い。
そう思いながら、目を覚ます。
最初から好意的に見てくれる世界から、そうじゃない世界に変わって、初めての日を迎えて。
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