第11話 遅刻ぎりぎり
「うーん、鏡お兄ちゃ……」
「どした」
「なんか声、いつもとちが……うわあああっ!!」
目を覚ました私の目の前には、鏡お兄ちゃんではなく、遼の顔のアップ!
き、キスするのかっていうくらい、近くて本当にびっくりした私は、ベッドから飛び起きて床に落ちる。
「痛いぃ……っ」
当然、お尻を床に落としてしまうわけで、結構痛かった。骨の凸凹が丁度いい具合に鈍く、だけど強く痛むところへと当たってしまったのだ。
「おいおい、大丈夫か」
「だ、大丈夫だけど、なんで遼が私の部屋に入ってきてるの!」
「幼馴染って言ったら、入れてくれたけど?」
「誰が」
「真白ってやつ」
「……真白さんー!? そりゃだめだわ、あの人のことだからきっと面白がって入れたに違いないわ……。そういう人って昨日一日でわかったもの」
ぶつぶつと文句を言う私。その背後で遼は「早く着替えろよ。学校行かねえと」と言った。
それを聞いた私は時計を見る。……遅刻寸前!
「なんでもっと早くに起こしてくれなかったの!」
「間に合うだろ、このくらい」
「レディーには支度ってものがあるのー!」
「魔法でちゃちゃっとやれよ。魔術学校の生徒なら」
「……あ、それもそっか」
私は頭の中で制服を着て、軽くお化粧をしている自分を想像した。すると足元から光が出て、体を包み込む。光が消えると、平凡な私が魔術高等学校の生徒の姿になっていた。
深い青の制服で、マントもついている。
もう、これだけでも魔法使いや錬金術師みたいだよ。
……そういえば、魔法と錬金術って違うものらしいんだよね。一応選択授業、取っておいたけど、どうなることやら。
なんて、思っていたら……。
「さすがにこの時間だと、俺でも間に合うかわからねえなぁ」
「……あ。ああっ!?」
どたばたと私達は歩いて行こうとして、ふと私は思い出す。そうだ。転移魔法を使えば間に合うかもしれない! 地図を思い起こして、行けるか感覚で考える。……うん。行ける!
ありがとう。宇都宮さん! あまり好きな感じじゃないけど、ある程度の高度な魔法を使えるようにしてくれたことには感謝しているよ!
「私の手、握って!」
「はあ?」
「いいから!」
「……おう」
その瞬間、私達はシェアハウスの私の部屋から、学校の門前に転移したのだった。
「間に合ったよ!」
「……手鞠、転移魔法なんて、大学レベルのもの、覚えてんのかよ」
「え、う、うん……」
なんだろう。不味かったかな。目立っちゃダメだった、かもしれない……。
「お前、すっげーな! これならギリギリまで眠っていられるじゃねえか!」
「こ、これはそういうためのものに使うんじゃないの!」
「ま、ともかく、職員室に行こうぜ。中までは行ったことないから転移魔法も使えないだろ。連れてってやるよ」
そう言われて、私は手を引かれて職員室まで連れて行ってもらった。
なんだろう。その優しさが、なんだか嬉しかった。
同時に、鏡お兄ちゃんを思い出して、切ない気持ちにもなるのだった。
何はともあれ、今日から新しい世界の学校生活を送るんだ! 頑張ろう!
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