第9話 こちらで初めての夕飯前
窓の外を見ると、もう夕方だった。
茜色の空が綺麗で、でも綺麗すぎて不安な気持ちにもなる。
それは、この先やっていけるかわからない不安なのかもしれない。
コンコン、と控えめのノックと同時に声がする。
「手鞠さん、ご飯が出来上がりましたよ」
ルナさんの声だ……!
「あ、はい! 今行きます!」
ベッドを軽く整えてから一階に降りていくと、夕飯の支度はすっかりと出来上がっていて、美味しそうな料理がたくさん並んでいた。
「わあ、美味しそう……! これ、ルナさんが?」
「ええ。そうよ。私、お料理が趣味なの。だから、食べたい人のために、こうして朝晩作ってるんです。あ、でも食べたくなかったら言ってくれれば取っておいたり出来るから、言ってくださいね。魔法で保存も効くから」
「ありがとうございます! えっと……」
「手鞠は私の隣に座りなよー。真白さんの隣はやめておいた方がいいよ。気に入られちゃったみたいだしさ」
刹那がそう言ってくれたから、ありがたく刹那の隣の席に座らせてもらった。
「あれ? 麗孝さんは?」
「彼はね、今頃モンスター狩りに行ってるよー。騎士団候補生だからね。麗孝は」
「ひぇっ、き、騎士団!」
騎士団と言えば、この街の憧れの職業第一位と言われている。それだけではなく、国の中でもこの街の騎士団はトップレベルの強さ、そして頭の良さと言われている……と、記憶されている。
「騎士団って容姿端麗、文武両道じゃないとなれないのかなー……」
「まさか、見た目が普通のおじさんの騎士もいるよー。手鞠ってば、麗孝さんを基準にしたらとんでもないことになるよ」
「え、口に出してた?」
「はっきりと」と刹那。
「私も聞きました。楽しそうで何よりです」ルナさんまで……。
「馬鹿じゃないの」
真白さんにまでぇ……っ。
「ほ、本人には言わないでねっ!」
ルナさんと刹那は頷いてくれたけど、真白さんだけとても楽しそうに笑いながらこう言う。
「どうしようっかなー」
「真白さん!」
それにしても真白さんも、ルックスはいいんだよなぁ。可愛い系の男の子というか。最近の……、元居た世界での合法ショタって言うんだったかな。それだよね。
「……今、僕でよからぬことを考えてたでしょ。わかるんだよね。僕」
にやっと真白さんは笑った。
「僕のこの幼気な容姿でなんてこと言ってんだーとか思ってるかもしれないけど、これがその内癖になるから。絶対」
「……真白のことは気にしないでくださいね。手鞠ちゃん」
「真白さん、いつもこうなの。見た目は確かに可愛いんだけどなぁ」
自分で自分の体を抱きしめる真白さんに、私は少しばかり薄ら寒いものを感じた。
「……ただいま」
そこへ麗孝さんが丁度帰ってきて、皆で夕食を囲むこととなった。
さて、お料理はどんな味なんだろう。
見た目からして美味しそうだから、楽しみ……!
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