【KAC20245】はなさない。

マクスウェルの仔猫

少女と少年、そしてビキニパンツ。

 関東圏、とある繁華街。


 春の夜を彩るビル群の光に、三人の男女が映し出されている。


 一人は、黒のビキニパンツのみを体に纏い、一部が崩壊しかかった十階建てビルの屋上でしゃがみ込んで右手を伸ばす黒髪の壮年。鍛え抜かれた、それでいて細身のしなやかな筋肉と彫りの深い顔が印象的である。


 もう一人は、その男の腕の先で宙吊りで藻掻もがくく、黒髪を二つお下げで纏め、デニムのショートパンツに半袖のTシャツを纏っている少女。


 ガンマンのように肩から吊り下げたホルスターと、腰のガンベルトが物々しい。そんな少女のシャツの背中には『Aragaki荒垣市 third三番』と赤い文字で刻まれている。


 そして。


 隣のビルの屋上に、白いコート姿の茶髪の少年。ビルの貯水槽にしたたかに頭と背中を打ち付け、五本指の先が出ている革の黒い手袋で頭を抱え、転げまわっている。コートの背中には、縦に赤い行書体で『邪眼神じゃがんしん 』と刻まれている。


 どうやら少年は、14歳の魂に宿りがちな病を……ん、んんっ。


 さておき。


 腕を掴まれてユラユラと揺れている少女は、あどけなさと大人びた雰囲気を併せ持った切れ長の瞳でビキニパンツの男を睨みつけた。


「離せぇ! 変質者のアンタに助けられたくない!」

「たまたまだ。気に病むな」


 睨みつけてくる少女の叫びに肩を竦めるビキニパンツ男。その動きに合わせて、ゆるりゆるり、と筋肉がしなやかな動きを見せる。


「夜は人出が多いからな、路上では気が滅入る。仕事を兼ねて空でジョギングとパルクールをしていたのだ」

「外で半裸になって走るのが仕事のうち?! ミエミエの嘘つくなぁ! 軽犯罪法違反で突き出してやる!」


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