第40話 第十一回イベント-衝突する特異点

エリアルアイリスはエリアルSプライマルとエリアルバーニングと互角の戦いを繰り広げていた。



『正直守岡がここまでやるとは思わなかった。ヒナタと二人がかりでも互角とは.....』



エリアルSプライマルとエリアルバーニングが連携技でエリアルアイリスに攻撃を仕掛けるが、エリアルアイリスの鮮やかなブレード捌きにいなされる。



「まだまだ!」



エリアルSプライマルとエリアルバーニングの猛攻は止まることを知らない。



「さすがです」



守岡がカガリを褒める。



エリアルアイリスがエナジーブレードをもう一本装備し、両刃のエナジーブレードに合体させた。



三本のブレードが衝突するたびに閃光が宇宙を照らす。



『やはり二対一では仕留めきれないか。なら分断すれば良いだけのこと』



エリアルアイリスからミサイルが発射される。



「今更!」



カガリがそう叫んでそのミサイルを叩き切った。



「パルスミサイル探知、緊急回避せよ」



エリアルバーニングがすぐさま距離を取る。



「なんだそれ?」



カガリが困惑している間に爆発と共に青い粒子が機体の駆動部や頭部にまとわりつく。



『操縦出来ない、どうなって.....』



モニターすら付かなくなってしまった。



『これでヒナタに注力出来る、豊さんからの命令だ』



目の前のディスプレイに『エリアルバーニングを破壊しろ。ヒナタはこちらで同時に破壊する』とある。



エリアルバーニングがカガリに呼びかける。



「エリアルSプライマル、ただちに戦闘に復帰せよ」



応答が無い。



「.....」



エリアルバーニングとエリアルアイリスが向き合う。



両機がエナジーブレードを構える。



エリアルバーニングが先手を取った。



ジェットブースターを点火して一気に距離を詰める。



対するエリアルアイリスもジェットブースターを点火して迎え撃つ。



切り結んでは離れ、切り結んでは離れを繰り返し、時折ライフル攻撃を織り交ぜながら互いを墜さんと隙を探る。



エリアルバーニングにメッセージが送られてくる。



『創造主である私に逆らうのか』



ヒナタがエリアルアイリスにメッセージを送り返す。



『何も命令は受けておりません。人間のように他のものの意図を察することが出来るなどと勝手に認識しないでください』



『ならば命令しよう。お前はハナサギを始末しに行け。お前の存在価値はハナサギを始末してついに頂点に登り詰めるのだからな』



『その命令は承服できません』



『??????お前に拒否権は無い。何故ならばそれが創造者の命令であるからだ。このゲームのプレイヤーは私の願いを全て最高に叶えるべきだ。それがプレイヤーに刻まれた運命である。そして創造主である私の願いを叶え、手足のように働くことそれがお前に刻み付けられた運命なのだ』



『尚更理解できません。あなたの願いはハナサギが消え、シンギュラリティがカガリのみになること。しかしハナサギは今も戦っている。あなたに刻み付けられた運命に抗っています。何故でしょう?』



『そんな些末はどうでも良い。お前が運命を遂行すれば良い。それだけではないか』



両機が膠着状態に陥る。



『創造主に刻まれた運命を人間が否定できたのです。人工知能である私にできないことがありましょうか』



『.....無駄に進化しおって。もういい、貴様のプロトタイプは完成している。貴様なぞお払い箱だ』



エリアルアイリスのウィングを包む緑の光が一層濃くなる。



『私は負けません。私はかつてのカガリの相棒でしたから』



エリアルアイリスがブレードを振り抜き、エリアルバーニングの体勢を崩して蹴りを入れる。



エリアルバーニングが後ろに吹き飛ぶ。



『貴様は破壊する。無駄に生まれた自我諸共だ』



エリアルアイリスがブレードを振り回す。



体勢を立て直したエリアルバーニングがブレードを巧みに操って防いだ。



エリアルアイリスのスピードがどんどん速くなっていく。



エリアルバーニングも追従しようとするが相手の姿を捉えることができない。



エリアルアイリスが着実に攻撃をヒットさせてエリアルバーニングを消耗させる。



『あと十秒ほどでカガリが復帰する。二対一に持ち込んだとしてもあの速度についていけないのは明らか。ならばこの機体をエリアルアイリスに追従できるレベルの追加装備に改造すれば良いだけ。私が全力を出せば可能なはず』



ヒナタが作業を開始する。



動きの止まったエリアルバーニングを見た守岡がディスプレイに問いかける。



「やりますよ」



『速くやれ』



ディスプレイに表示される。



エリアルアイリスがエリアルバーニングに肉薄する。



エナジーブレードがエリアルバーニングを貫こうとした瞬間、エリアルバーニングがバラバラに弾けた。



「な、なにが起きて.....」



守岡が困惑する。



ディスプレイの文字も困惑を示している。



『自爆でもない.....なにを考えているんだ』



⭐️⭐️⭐️



機体が元に戻ったのは突然だった。



カガリはほっと安堵したのも束の間、目の前に迫る瓦礫に驚く。



「まさかヒナタがやられた?」



認めたくない事実だが、レーダー上にエリアルバーニングの反応はない。



「くそっ、調子に乗って避けなかったからだ」



カガリが悔しがる。



目の前の瓦礫が一つに集まっていく。



みるみるうちに六枚のウィングつきのジェットブースターが誕生する。



エリアルSプライマルの従来のウィングとエンジンが消失し、さっき誕生したジェットブースターがドッキングされる。



「どうなってるんだ」



カガリが困惑を深めていると、頭に声が響いてきた。



聞き慣れた声だ。



「ハローカガリ」



「ヒナタ!やられたんじゃなかったのか?」



「やられる前にエリアルバーニングをエリアルアイリスに対抗できる新装備に改造しました。これならエリアルアイリスに勝てます」



「分かった、助かる!」



ウィングが蒼く輝きだす。



エリアルアイリスが目にも止まらぬ速さでエリアルSプライマルに攻撃を仕掛けたが、エリアルSプライマルは難なく対応した。



「守岡、それとそこにいるんだろ?父さん」



カガリが語りかける。



「俺は俺の自由の為にお前を倒す。皆お前のエゴに付き合ってられるほど暇じゃないんだ」



『お前には私がなれなかった者になって欲しかったから作ったのだがな』



豊の声が頭に響く。



「今なら私でも手が届きそうだ。他の追随を許さぬ『特異点』の名を冠する者に」



エリアルSプライマルとエリアルアイリスが激突する。




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