第35話 ヒナタとの邂逅と呪縛

「さーて、リハビリといこうか」



ヨッシーは気合い十分のようだ。



「がんばろー!」



アテナも元気いっぱいだ。



《敵はおよそ十機。油断はしないことね》



ユカが通信を入れる。



「分かりました!」



アテナが頷いてエステア軍の元へ突撃する。



「よっしゃ、行くぞ!」



ヨッシーがアテナと並ぶ。



エナジーソードが閃く。



エステア軍のアーマードスーツが爆発する。



「やったぁ!一機撃墜!」



アテナが喜ぶ。



「背中ががら空きだぜ?」



エリアルガスターがエリアルククバーヤの後ろに迫っていた敵機を撃ち抜く。



《ナイス援護よ、ヨッシー。気を抜いたらやられるわよ、アテナちゃん》



「了解です。ありがとうございます」



「気にすんな。さ、続きと行こうぜ」



「はい!」



二人の活躍は目覚ましく、あっという間に敵が姿を消していく。



「ふん!こんなんじゃ私の相手にはならないわ!」



アテナが高らかに叫ぶ。



「すーぐ調子に、、、、、レーダーに敵の増援を確認!一機脚の早いやつがいる」



「赤蛇かもしれません、俺が出ます」



俺はレーダーを確認し、脚の早い敵のもとへ向かった。



「赤蛇はハナサギに任せて、俺たちは引き続き雑魚を相手するぞ」



「分かりました」



ヨッシーとアテナも自分のすべきことを理解しているようだ。



「やっぱり赤蛇だ」



特徴的なカラーリングの機体が進路を変更する。



「エリアルヘロン、交戦する!」



エリアルヘロンが赤蛇に追従し、エナジーブレードで斬りかかる。



眩い閃光が二機を照らす。



「あれ、赤蛇ってこんな強かったっけ?」



俺は前に戦った赤蛇を思い出す。



『なんか強化入ってないか?』



《赤蛇に手こずるなんて、調子悪いわね》



ユカが意外そうに言う。



俺は即座に否定した。



「違う、赤蛇が強くなってる!」



赤蛇からファンネルが射出される。



「おいおい、赤蛇からファンネルが吐き出されたぞ?」



ヨッシーが唖然とする。



《え?ちょっとどう言うこと?そんなアプデ聞いてないわよ?》



ユカも驚く。



《ヨッシー、アテナ、帰還するんだ》



ミネーが二人に撤退を促す。



「コイツ、黒蛇ぐらい強いんだ。早く逃げて!」



俺は赤蛇と切り結びながら促す。



「分かった、アテナ帰還するぞ!」



「は、はい!」



エリアルガスターとエリアルククバーヤがその場から離れる。



《ハナ、、、、、ヤバく、、、、、》



ユカからの通信が途切れた。



「え、通信が、、、、、」



《ハローハナサギ》



赤蛇から通信が送られてくる。



抑揚のない、無機質な女の声だ。



なんだ、こいつ喋れるのか?今までのやつからは断末魔とか聞かなかったけどなんでなんだ?



いやいや、そんなことより、、、、、、



「だ、誰だ」



《私は人工知能ヒナタ。カガリの父、神狩豊を創造主とする》



「へえ、どうも、、、、、」



《私はあなたに興味を持った。だからこうして接触をしている。カガリを、私を神狩豊の呪縛から解放してくれるかもしれない存在であるあなたに》



「呪縛?」



こんな近未来的なゲームで呪縛なんて言葉を聞くとは思わなかった。



《神狩豊を慕っていた人間達、すなわちこの世界を私とともに創造した人間です》



それは、つまり、、、、、。



「運営ってことか?」



《あなたの視点からすればそうなります。彼らはカガリが頂点に立つべきだと考えています。それが神狩豊の願いだったから。その願いは私の生み出したシンギュラリティという要素で叶えられていましたが、同時にカガリを縛り付けていました》



「、、、、、どうして俺をシンギュラリティにしたんですか?」



《私はもうプレイヤーをシンギュラリティにする権限は持っていません。私はその要素を手放しています。あなたは運命に選ばれただけです》



「運命、ですか」



《第十一回イベントは総力戦です。きっと苦しい戦いになるでしょう。私と戦うことになるかもしれません。創造主とも。私はあなたを信じます。カガリも同じでしょう。それでは》



通信が途切れ、赤蛇が動き出す。



先ほどとは打って変わって鈍重な動きだ。



俺は即座に胴体を切り裂いて赤蛇を撃墜した。



「、、、、、全く意味が分からん」



《ハナサギ君、応答して!》



「わっ!びっくりした」



《どうしたの?通信どころかレーダーまでやられちゃって、そっちの動きを追えなかったんだけど》



「もう大丈夫ですよ。帰還します」



さっきのことは言わなくて良いだろう。



余計な混乱を招くだけだろう。



『呪縛か、、、、、俺に解放することが出来るのか、、、、、』



俺は複雑な気持ちを心に抱えながら『ノアの方舟』に帰還した。



そして 時間は流れ、いよいよ第十一回イベントの二日前となった。





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