第26話 赫翼と黒蛇(2)

黒蛇のファンネルの動きが一層鈍くなる。



「また鈍くなった。ヤバイヤバイ!」



俺は焦って黒蛇に突撃しようとしたが、ファンネルに阻止される。



エナジーブレードでファンネルから放たれた攻撃を弾く。



「くそ、近づけない!」



武装をバーストマグナムに切り替えて乱射する。



黒蛇は破壊的なエネルギーの塊をひゅいひゅい避けながらファンネルを呼び戻し、一斉射撃する。



「なんだよそれ!」



エリアルヘロンが急旋回して黒蛇の後ろに回り込む。



「もらったー!」



バーストマグナムが火を吹く。



黒蛇はファンネルを盾の形に集めてそれを防いだ。



「ファンネルってそんな使い方もできんのかよ!」



俺が驚いているうちに黒蛇がエナジーブレードを振り上げてエリアルヘロンに迫っていた。



俺は咄嗟にエリアルヘロンの武装をライフルに切り替え、それを黒蛇に投げつけた。



黒蛇が一瞬気を取られる。



その隙にエリアルヘロンが黒蛇の頭上をとった。



エリアルヘロンがエナジーブレードを振り下ろした。



黒蛇も機体を回転させて振り下ろされたブレードを受け止める。



「仕留めきれなかった、、、、、。俺じゃ無理か」



黒蛇が攻勢に出た。



「てかファンネルなくなってるじゃん!」



黒蛇の一撃をなんとか凌ぐ。



「あっぶね!マジで気を抜いてなくてもヤバいわ」



俺は滝汗を流しながら黒蛇に意識を集中させる。



奴はファンネルをもう使えない。接近戦がメインになってくるだろう。俺じゃどう足掻いたって勝てない。バーストマグナムで消し飛ばすしか、、、、、。



俺の脳内に一つの方法が煌めく。



「上手くいって相打ち、下手すりゃ俺だけやられるかも。でも、これしか思いつかないしな」



エリアルヘロンが黒蛇を激しい接近戦に持ち込む。



エナジーブレードがぶつかるたびに火花が散る。



黒蛇の一撃がエリアルヘロンのエナジーブレードを弾き飛ばした。



エリアルヘロンは即座にバーストマグナムを装備して、全速力で遠ざかる。



黒蛇も全速力でエリアルヘロンのコックピットを貫かんと追跡する。



「まだだ、あと少し」



俺はタイミングを見計らった。



動悸が身体中を火照らせる。



黒蛇が迫ってくる。



「今だ!」



俺は急ブレーキをかけた。



黒蛇がとんでもない速さで近づいてくる。



「うおおおおお!」



バギュゥゥゥゥン!



黒蛇が回避しようと上昇するが間に合わなかった。



黒蛇の下腹部をバーストマグナムが貫く。



黒蛇が爆発四散した。




「、、、、、勝った?もしかして俺、黒蛇に勝ったぁぁぁぁ!?」



俺は喜びを爆発させた。



⭐️⭐️⭐️



「聞こえるか?ハナサギ、ハナサギ!」



ミネーは懸命にハナサギの名を読んでいた。



突如通信が途絶えたのを察知したミネーとカガリは通信妨害の原因を探っていたのだ。



通信を何度も試みていると、突然ハナサギの絶叫が耳にこだました。



「勝ったぁぁぁぁ!?」



「うるさっ!」



「繋がったか!」



カガリが安心したように尋ねる。



「聞いてくれよ、ミネー!俺黒蛇に勝ったぜ!」



「ったく、心配、、、、、へ?黒蛇?」



ミネーが呆然とする。



「黒蛇が同時に二機も?」



カガリが訝しむ。



「いやいや、黒蛇だぜ?」



ミネーがそこじゃないだろ、と言わんばかりにツッコむ。



「あ、そうか。凄いじゃないか」



カガリは思い出したように軽ーく褒めただけだった。



「えー、さすがS(シンギュラリティ)って感じだなぁ」



「天体破壊兵器の格納場所は見つけているわ。バーストマグナムで攻撃してみたけど針穴ひとつ開かなかったわ。兵器が露出するのを待つしかないみたいよ」



エレンが報告する。



「分かった。艦隊を進軍させよう。おそらくこいつはシールドやターボレーザーを一切搭載していない。アーマードスーツだけで防空機能を担っているんだろう」



「そんな脳筋か?」



「エネルギーを天体破壊兵器に集中させている、と言う設定なんだろう。俺たちができることは天体破壊兵器が露出するまで、ひたすらアーマードスーツを倒すことだ」



「分かった。アリス達もこっちに呼ぼう。敵はできるだけ前の方で抑えた方が良いと思う」



俺の意見に皆が賛同する。



⭐️⭐️⭐️



《と言うわけだ。艦隊を動かしてくれ》



カガリからの通信を受け取ったユカが指示を出す。



「了解。グレイス、全部隊をデモンズへ向かわせて」



《は?なに言ってるんだ?》



「そのまんまよ。全部隊を動かして」



《ユカ艦長》



フレイが通信を繋いできた。



《この戦闘のゆくすえをあなたに託します。後は私がなんとかします。だから、だからデモンズを、、、、、》



「言うに及びませんよ、フレイさん。もとよりそのつもりなので。全艦隊に告ぐ!これよりデモンズに一切攻撃を仕掛ける。最大戦速でデモンズへ進軍せよ!」



ユカの指示を受けた艦隊が動き出す。



グレイス達もデモンズに向けて移動を開始した。



⭐️⭐️⭐️



その日、『スペースウォーリャーズ』の歴史に新たなプレイヤーネームがひっそりと刻まれた。



エリアルSシンギュラリティプライマル、カガリ以来初となる黒蛇の単独撃破者。



エリアルヘロン、ハナサギ

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