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アバは退屈だった。
アバは片割れ石の上に寝転がって考えた。どうにかしてこの退屈な時間から解放されるための策を。うんと頭を捻って、角を掻いて、体を丸めたり伸ばしたりしてみて、十年ほどウンウン唸って考えた。そうしてようやく、アバは緩慢で白く濁った退屈な時間から抜け出す方法を思いついた。
人間になればいいのだ。
アバはその答えに辿り着いた瞬間、自分のことを、本当に、心の底から賢いと思った。三賢者にも劣らぬ悟性だとすら思った。今ならば賢の謎にも智の問いにも答えを突きつけられるとすら思った。それほどまでに、アバは退屈に苦しまされていたのだ。ここ百年で一番に不憫な奴だった。
さて、思い立ったが吉日と、アバは早速人間になる準備を始めた。準備と言ってもアバほどの者であれば変化など眠るよりも簡単にできるし、体を作り変えるにしても一月あれば十分である。必要なのは人間になった時に纏わねばならないという服だけであった。アバは
片割れ石 上面が磨かれたように平たい巨大な岩。双子の白鬼が大喧嘩をした時に半分に斬られた片割れだと言われている。もう半分は天にあるという逸話がある。
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