クラスメイト達のチート能力
次に翔哉が意識を取り戻した時は、硬く冷たい石造りの床に這いつくばっている状態だった。
周りを見渡すと、あの瞬間、教室に居たクラスメイト達も、全員がその場にへたり込んでいたり、這いつくばっていたりしていた。
そこは石造りの礼拝堂のような場所で、体育館ほどの広さであり、ステンドグラスから溢れる光が神々しい、荘厳な雰囲気のある空間であった。
司祭らしき衣装を纏った100人以上の男達が、クラスメイト達を取り囲むように周囲に配置されており、どうやら教室で聞こえてきたものと同じものだと思われる合唱を、たった今、終えたところのようだ。
祭壇の壇上に立つ、豪奢な法衣を身に纏った男が、大きな声で叫び出す。
「おお! 全知全能なる神、ハーベの御導きの通り、勇者達の召喚は成功した! これでこの世界は邪神の魔の手から救われるで有ろう!」
その豪奢な法衣を纏った男の言葉に、一部の生徒達が錯乱し喚き出す者も現れる。
「何よこれ! まさか異世界ファンタジーとかで有りがちな、異世界召喚ってやつなの!?」
「はぁ? お前バカなのか? 何処かのクラスの余興に決まってんだろ!?」
「馬鹿なのはあんたの方でしょ!? 学生がこんな凄いセットを作れるわけ無いじゃない!」
二人の会話に他の生徒達もざわめき出す。
そんな中、祭壇の壇上に立っていた男が、大きな声で話し始める。
「異世界の皆様方、静粛に願います! 私は聖道教の最高司祭トーレスと言う者です。突然の事に大変、驚かれているでしょうが、落ち着いて私の話を聞いて下さい!」
不良男子の太志が、その言葉にすぐに反応して叫ぶ。
「はぁ? 落ち着いて話を聞けだ? フザけんなよ、おっさん!」
彼の叫びに学校一のイケメン天上寺が、窘めるような発言をする。
「剛田くん! 気持ちはわかるけど、まずは落ち着こう! 話を聞いてみない事には、対処のしようもないからね」
「あ? 何、偉そうにリーダー面してんだよ天上寺!」
「僕は別にリーダー面したいわけじゃないよ! ただ皆の為にも、早くちゃんと状況の確認がしたいだけさ!」
女子生徒の一人も同調して叫ぶ。
「そうよ! 天上寺くんの言う通りよ! モテないからって、やっかんでるんじゃないわよ! 本当はあんたの方こそ、リーダー面したいんじゃないの?」
「あ? ぶっ殺されてーのか?このアマ!」
神に選ばれた異世界人達が、召喚早々いきなり仲間割れを始めた事に対し、引いてしまっている様子の司祭達。
他の女子達も最初に叫んだ子に同調しだして、次第にヒートアップしていき、その場は騒然となってしまう。
そんな中、気を取り直したトーレスは再び大きな声で話し出す。
「異世界人の皆様! どうか静粛に願います。先程の方がおっしゃった通り、まずは私の説明を聞いてください!」
彼の言葉に生徒達はようやく言い争いを止め、その場は静寂に包まれる。
話し出す環境になったと思ったトーレスは、続けて説明を始めた。
「あなた方はこの世界の創造神であるハーベによって、大いなる力を与えられ、邪神の魔の手から世界を救う為に召喚されたのです! 神によって選ばれたあなた方は、普通の人間からは考えられないような力を持っております。どうかその力を使い、この世界をお救い下さい!」
彼の話を聞いた隼人が、手を上げて質問する。
「ちょっと質問よろしいでしょうか? いきなりそんな事を言われても、僕達にも元の世界での生活があります。こんな理不尽な事もないと思うんですが、当然、元の世界に帰してもらう事もできるんですよね?」
「勿論ですとも! 邪神を倒す事に成功した暁には、創造神ハーベより、元の世界に戻る方法についての神託があるはずです。ご希望される方については、その際、必ず元の世界にお帰しすると約束いたしましょう!」
再び隼人が質問する。
「それは今の段階では、帰る方法が無いって事ですか?」
「残念ながらその通りです。召喚する際も、それについての方法が神託にて有ったからこそなのです。帰還する方法についての神託は、その際には有りませんでした」
「それじゃ目的を達成したら、帰還する方法についての神託をもう一度出すって、その時ハーベ様は言っていたんですね?」
「はい! 確かにそうおっしゃっておりましたので、その点についてはご安心下さい」
どうも胡散臭い話である。しかし、帰還する方法が有るとすれば、ハーベとやらの神託を得るしか無さそうだ。とりあえず今はその話を信じて、彼らの要求に従うしか無いだろう。
翔哉を含めた殆どのクラスメイト達は、そう考えていた。
何となく納得したような雰囲気になっていると感じたトーレスは、続いて召喚者の能力を確認する方法について説明する。
「どうやら納得していただけたようですね! では、これから皆様方の能力を確認いたしますので、こちらに有る水晶の前に一人づつお立ちください」
トーレスが立つ祭壇上には、台座に乗った状態の、直径が30センチは有りそうな水晶が置かれていた。
祭壇に近い者から自然に列ができ、一番遠くにいた翔哉は最後尾に並んだ。
先頭に居た男子生徒が水晶の前に立つと、周りを取り囲んでいた司祭達が聖歌のような歌を合唱し始める。
すると彼の体は、水晶と共に眩いばかりの強烈な光を放ち出す。光が収まると、祭壇の前には美しいデザインの短剣と、一枚の銀色に輝くプレートが置かれていた。
トーレスは彼に言う。
「そのプレートを手に取り、ステータスオープンと言ってみて下さい」
トップバッターだった男子生徒は、トーレスに言われた通りにプレートを手に取り「ステータスオープン!」と言った。
「うわ! 何だよこれ? スゲー! まるでゲームみたいじゃないか!」
そう叫んだ男子生徒の目の前の空中には、うっすら緑色に光る半透明のパネルが浮かび上がっており、そこには彼のステータスに関する情報が書かれていたのだ。
以下、その男子生徒のステータス情報。
名前 影山緋色 年齢 17歳 天職 暗殺者
天恵レベル 1
腕力 12(52)
敏捷 14(54)
体力 18(58)
光力 40
光力操作 5
アクティブスキル
隠密レベル1 気配感知レベル1 弱点看破レベル1
縮地レベル1
パッシブスキル
全状態異常耐性レベル3 闇力耐性レベル1
トーレスの説明によれば、腕力はそのままの意味で腕の力、敏捷は脚力と反射神経、体力は肉体的強さと持久力であり、日々の訓練などで上がっていくのは、普通の人間と同じ事のようだ。
光力と言う項目にある数値が身体能力に補正値を与え、カッコ内の数値がそれであるらしい。
成獣のヒグマの腕力が50前後である為、補正値のかかった状態のステータスは、彼のものでも十分に人外なレベルであると言えよう。
スキルを使用したり、実戦や実戦形式の訓練をしたりする事で、上昇していく天恵レベルが増加する度に、この光力の数値も上がっていくと言う話だった。
そしてプレートと一緒に置かれていた武器は、神から個人に与えられた神器らしく、神界の金属で作られている為に非常に強力で、人界に有る武器とは比較にならない性能なのだそうだ。
次々とクラスメイト達のステータスが判明していく中、隼人の確認が終わり、トーレスから驚嘆の声が上がった。
「おお! これは素晴らしい! これほどまでの力、伝承に有った過去の召喚者の中でも、恐らく最強のものと言えるでしょう!」
以下、隼人のステータス情報。
名前 天上寺隼人 年齢 16歳 天職 勇者
天恵レベル1
腕力 15(135)
敏捷 16(136)
体力 23(143)
光力 120
光力操作 15
アクティブスキル
光爆覇レベル1 神の息吹レベル1 天の結界レベル1
パッシブスキル
全状態異常耐性レベル5 全属性耐性レベル2
隼人はトーレスの感嘆する声を受け、自分なら当然と言った感じで、どや顔をしている。彼は今までの人生の中で、きっと挫折した経験など無いのだろう。
そんな彼の様子を見て舌打ちしていたのは、不良担当の剛田太志である。自分の順番になった彼は、恐る恐る壇上に立つ。
以下、太志のステータス情報。
名前 剛田太志 年齢17歳 天職 狂戦士
天恵レベル1
腕力 18(148)
敏捷 23(153)
体力 19(149)
光力 130
光力操作 5
アクティブスキル
狂戦士化レベル3 金剛レベル1
パッシブスキル
なし
この表示を受け、再びトーレスは感嘆の声をあげる。
「おお! これはまた素晴らしい能力値です! 今回の召喚者達は恐らく、過去最高の強さだと言えるでしょう!」
彼の感嘆する声を受た太志は、隼人の方を一瞥すると「へっ!」と短く笑い声をだし、どや顔をお返ししていた。
その後も順調にステータスの確認が行われていき、ついに最後の一人となる。待ちに待った翔哉の順番が、ようやく回って来たのだ。
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