第9話 結婚式と初夜の翌朝
結婚式は王宮の奥深くにある祈祷所でひっそり身内だけで行われる。
国内外に新しく夫婦になった二人をお披露目するためのパーティは、その一週間後に華やかに催される。
結婚式の間にメルの荷物、といっても王宮でもらった着替えや化粧品くらいしかないのだが、それらは別の部屋に移動されていた。
式の後、今までの客間ではなく王太子夫妻用の部屋に案内されたメルはそわそわと落ち着かないものを感じた。
部屋は三間一続きのスイートルームで、中央に夫婦が生活をするためのベッドやテーブルなど家財が置かれている。
両端の部屋は妻と夫、それぞれ別々の個室で、メルの私物はその一方の部屋に置かれていた。
個室と中央の夫婦共同の部屋の間の扉には鍵をかけられる。
個室にもベッドがあり『夫婦ケンカの時』用にはいいかもしれない。
女官の介助を得て入浴を終えても、夫のベネットは部屋に戻ってこなかった。
夜も更け式の疲れからかメルは強烈な睡魔に襲われた。
先に寝ちゃうのはまずいわよね……。
白い結婚なんだから、そこまで気を使わなくてもよい?
そう、初夜といってもそういうことなんだから、そこまで緊張することないのにバカみたい。
ただ、そのベネット様が戻ってこられて一言あいさつをしたいだけで……。
それが済んだら個室の方で寝てもいいし、うん。
そう、それまでベネット様をここでお待ちして……。
メルはソファに腰かけて睡魔と戦っている間にとうとう寝落ちしてしまった。
それからしばらくして部屋に戻ってきたベネットは、ソファーの上で熟睡しているメルを発見し、彼女を中央の部屋のベッドの上に運んであげると、自分は個室の方のベッドで就寝した。
翌朝メルは中央の部屋の夫婦用のダブルベッドの上で目覚めた。
ベットの中央で手足を伸ばして眠っていた自分に気づいたときは、正直きまりがわるかった。
朝起きた時はベネットはすでにいなかったので、結局いつ帰ってきたのか、それとも帰ってこなかったのかすら、メルにはわからなかった。
メルが目覚めたのに気が付いたばあやが、部屋に入ってきて朝食の準備をしてくれた。
今日は一日休みでいいが、明日からは王太子妃としての仕事を任せたいので王妃の部屋まで来てほしいとの伝言をたずさえていた。
パーティでの装飾品の件もあり王妃の性格をよく知っているばあやは危惧した。
王太子妃になったら、仕事を振り分けるのも正当な行為だし文句ないのでしょう。
覚えてらっしゃい!
逆恨みに近い感情を持っている可能性がある。
「王妃様に仕事を言われたら、ベネット様には一応ご報告したほうがメルさまのためですよ。どさくさ紛れにご自分の仕事を、これでもかとメルさまに押し付ける可能性がありますからね」
ばあやはメルに忠告した。
手持ちぶさたのメルが庭でも散歩しようと部屋を出ると、なぜか自分の部屋のすぐ近くでオーブリーとクレール、二人の王子とエメが侍女を引き留めて話し込んでいた。
その侍女はさきほどまでメルのいる王太子夫妻の部屋で作業をしていた侍女である。
彼らは侍女に何か尋ねているようだ。
侍女は戸惑いながら彼らの質問に答えているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます