オートマチック

引き出しの奥から見つけた箱からは

いつかキミからもらった自動巻き腕時計が出てきた

それをなんとなく取り出して

腕に巻く

ふと思い立って出掛けることにした


海沿いの国道を自動車に乗って走る


あの頃と変わらない懐かしい景色


すれ違った潮風はあの日の二人の間をすり抜けた

いつかの匂いがした


人気のないアーケードには

生まれた季節に見上げた錆びた看板

セピア色の喫茶店

つきあたりには

まだ新しい真っ白なショーウィンドウがあった


つい癖で目を落とした文字盤は

一体いつの時間を示しているんだろう?


あの日止まった時間を始めた今日と

キミとの時差はもう埋まらなくって


それがどうしようもなく

越えられないキョリであることが身に染みた

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