61 欲しいものは手の中にあった

◇純子◇


今になってみると、なんでルナお姉ちゃんに対抗心のようなものが沸いたのか。


麗子のお陰で分かった。


私とルナお姉ちゃんは、双子なのに全く似てない。趣味も違う。


フランス人ハーフ同士の血を濃く引いた見た目、歌もうまい私は、派手な交遊関係がメインになった。男子まで来て浮かれてた。


お姉ちゃんは私も慕ってた時子先輩に誘われて柔道を始めた。なおさら友達のカラーも違ってきた。


中3になって、私は女の子と関係を持ち始めた。お姉ちゃんは変わらずマイペースだった。


私は周りには持ち上げられ、自信を持ち始めていた。


けれど、本当に仲良くなりたかった人、付き合いが長い友人は、気が付けばルナお姉ちゃんのところにいた。


ルナお姉ちゃんが信頼している3人の友人は、私とも付き合いが長い。


だから、お茶に誘った。私は純粋に友達として遊びたいのに、「ルナを守りたい」と言って警戒されてきた。


そのときは、なんでだろうと不思議だった。


だから悔しくなった。お姉ちゃんと同時に知り合った人には、積極的に声をかけた。


派手な私に最初に目を引かれる。そして普通にセットとなる性的行動も付いてきた。裸の付き合いも、あっという間に2桁にのぼった。


そして女の子達は私に気に入られるために、ルナお姉ちゃんのことを『地味子』と呼んだ。


自称・伊集院親衛隊にも、塩対応の私と同時にルナお姉ちゃんの悪口を言う子が出てきた。


お姉ちゃんが寂しそうな顔をし始めた。


私と●ックスした男子もルナお姉ちゃんは、私と仲良くなるために利用したと言った。


醜い優越感がわいてしまった。最低だった。


つい・・お姉ちゃんへの悪口を止めなかった。


希少な男子にまで言い寄られて、浮かれすぎて、そして勝った気がして気遣いがなくなっていた。


冤罪をかけられたお姉ちゃんのピンチの時さえ、電話で知らせてくれた友人の着信までシカトした。



そして、自分の足場が崩壊した。



薄っぺらい人間関係しか築いてなかったと自分で笑った。


そんな馬鹿な私を助けてくれた人がいた。


麗子だ。


最初、はっきり同情だと言われた。慰めてくれないけど、ご飯を作ってくれて一緒に食べた。


麗子は私の手を離さなかった。自動的にパン屋の手伝いも始めていた。やがて麗子とそういう関係になった。


今までと違う気持ちが込み上げてきた。


そんな時、ルナお姉ちゃんが勇太君を連れてパン屋に現れた。


偶然だった。勇太君は魅力的だけど、ルナお姉ちゃんに惚れているのが分かった。


そのイケてる勇太君が、まだ麗子にも未練があるという噂があった。ルナお姉ちゃん公認で2度目の告白をするという話も聞こえてきてた。


ガゼだったけどね・・。その時は焦った。


もし麗子が勇太君に告白されてOKすれば、当然ルナお姉ちゃんの近くにいる。そしてルナお姉ちゃんの良さに気付く。


私が本当に大事な人ばかり、みんなルナお姉ちゃんのモノになる。まさか麗子までって、不安を感じた。



そんな風に疑った私は馬鹿だった。


こんな私との関係を麗子は『真実の愛』だと人前で言ってくれた。


麗子って勉強ができるくせに、人を見る目がない。


なんで私を選ぶんだろう。こんな不良物件を・・


それに先走りすぎだよ、と思ったけど嬉しかった。



本当に嬉しかった。


そんで麗子の顔を見たとき、ハッとした。


私だけを見ていてくれる。



やっと分かった。私ってダメすぎる。


5月に糾弾されて色んなものが手からこぼれ落ちた。なのに、そこからの生活は夢中になれた。


私、欲しいものは手に入れていた。



麗子は、勇太君やルナお姉ちゃん、伊集院君と距離が縮まってもブレない。


私を一番に考えてくれる。


だから私は気付けた。


誰かのオンリーワンになりたかったんだ。



誠実でありたいと初めて思った。だから、勇太君みたいなことをする。


勇太くん以前はやらかしていた。


ゲスなときにやったことは消せないからと、希少な男子なのに女子に謝罪して回ったことが有名になっている。


だから彼の真似をして、迷惑をかけた人に謝って回っている。


人気がある勇太君だけでなく、大きな力を持つ人達がバックにいる伊集院君と仲良くなれた。


そのお陰で面と向かって私に何か言う人はいなくなった。


だからと言って、迷惑をかけた人たちをスルーするのも違うと感じられるようになった。



勇太君も言ってたけど、これは精神的にきつい。気が強い元セッ●スフレ●ドに罵倒されたりもした。


だけど誰かに謝罪したあとは、麗子が抱き締めてくれた。涙が出た。


私はなんて、恵まれてるんだろうって感じてる。



今は麗子だけ。


再び話すようになったクラスメイトから、「純子なら勇太君と付き合えるよ」と言われたけど、麗子が優先って断言できた。




ただね・・麗子って思ってた以上にぶっ飛んでる。


早くもトンデモ提案をされた。


いずれ2人の間に子供が欲しいから、勇太君に私達2人への種付けを頼もうだって。


「え、ええ、それって・・」


種付けのみのお願い自体は、男女比1対12になり400年の歴史もあって、昭和までは普通だった。


人工受精の技術が発展して激減したけど、慣例として残っている。


男子への謝礼金、認知とか面会とかの取り決めをして、最初に契約書を作るらしい。


ただ麗子あんた、勇太君を2度もフったでしょ。種付けって、勇太君とセッ●スするんだよ。


「頼むのは種付けだけ。歴史と保険社会学でも習ったでしょ。純子と一緒に3Pプレイからお願いするの。好きなのは純子だけだよ。勇太ファミリーの女王・梓ちゃんに話はしてあるからね」


もちろん、梓ちゃんには丁重にお断りされたそうだ。


いやいや麗子、何故だろうじゃないって。


ルナお姉ちゃんは、種付けするくらいなら2人とも勇太君の嫁に加われとうるさい。


こっちもとんちんかんだ。


男女比1対12の世の中にあっても、麗子もルナお姉ちゃんも無茶苦茶だ。


勇太君と伊集院君にパン屋の歌まで託されて、忙しくなってきた。だけど充実している。



セ●クスクイーンと呼ばれて虚勢を張ってた頃より、今の方が断然幸せ。




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