第2話:そうだよな。これは、当たり前のことだ
錬金術とは、ありふれた金属から貴金属を生成する試みのことを指す。
だが現代の知識を合わせることで、それは無限の可能性を生む。
頭の中で回復薬を想像する。
ランクはEDCBAS 。
色で想像すれば楽だ。
Sは好きな青にしよう。
こんな感じでイメージを沸かせると、頭の中でレシピになっていく。
それは俺だけにしかわからない作り方となる。
文字に起こすこともできるが、そんな事をすれば危険なだけだ。
王都で有名な錬金術の話がある。
そいつは
理由はわからない。
死体はフェイクで人さらいにあって、工場で永遠に作らされているとか。
利権関係で邪魔になって殺されたとか。
時間さえあれば、レシピをかき集めることで俺はS級を作ることができる。
欠損を回復させるほどの効力を持つが、あまりにも高価すぎる。
故に、一度だけ作ってから宝箱に入れてある。
いつも作るのはC級、それ以上は禁止だ。
頭の中でレシピが出来上がるとそれはいつでも開くことができる。
『クラスC回復ポーション』
・必要アイテム
・アドレル草 × 3
・トルニアル木の根っこ × 2
・エビストリアの魔核 × 1
・真水 300cc
適切な調合器具を用意し、火を使って調合する。
アドレル草、トルニアル木の根っこ、エビストリアの魔核を順に調合器に投入。
真水を加え、全ての材料を調合器内で混ぜ合わせると、混合過程で微細な魔法のエネルギーが放出されるのだが、この止めるタイミングが難しい。
調合が完了したら、火から取り外し、ポーションを冷ます。
冷えたポーションを適切な容器に注ぎ入れ、密封して寝かせれば完成だ。
材料はぽんっと無から出てはこないので、自分で獲りに行くか、買うか、冒険者に依頼する。
初めはこれが一番大変だった。
なんせ元の世界にはないものばかりだ。
だが何度か本を読み、冒険者の資格を取得、依頼や採集をこなして作りあげた。
後は卸価格さえ安定すれば差引額で毎月の一定が手に入る。
今の家賃は5万ゴールド、日本円に換算すると万だとわかりやすい。
毎月のポーションの純利益が20万なので、材料費や依頼日を考えると手元に残るのが約13万程度。
だがこれは、王都の平民の平均よりも高い。
当然これだけじゃない。
他にも売り買いしたりするので、純粋な収入は20万くらいだろう。
今でも十分だが、もっと安定したいいものを作る為に日夜奮闘している。
ちなみにS級ポーションは一つで3000万はくだらない。
その代わり俺の命が亡くなる可能性もあるが。
用心棒を雇ってもいいが、どうしても目立ちたくない。
ちまちま稼ぐ方がいいと思うのは、如何にも日本人らしいなと思う。
残ったお金は日々の食事や観光、もちろん俺も男なのでたまに性欲にも使う。
合法で、キチンと大人の女性が相手してくれるところだ。
ハッキリいえば元の世界の健全な男性と変わらない生活を送っている。
ただその気になればこの王都を滅ぼすことができる核ですら作れる男だが。
「…………」
「C級じゃ全くダメか」
一日中皮膚からポーションを摂取してもらったが、皮膚が少し回復しているだけだった。
それでも少しは痛みが和らいでいるとは思うが、これでは意味がない。
S級を使ってみるしかないが、新しく作るには多くの材料費がいる。
今あるのは、宝箱の一つだけ。
……さて。
宝箱を開けて、少し考える。
これは、もしもの時にとって置いたものだ。
一度作ったときは無知だった。
誰かに嗅ぎつかれなかったのは運。
残しておきたいが――。
「……う……」
そのとき、エルフの声が聞こえた。
それが俺には、生きたいと叫んでるように思えた。
――そうだよな。これは、当たり前のことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます