その十字路で、私を呼ぶもの

沢村基

プロローグ

 私は高校の夏休みに、なつかしいこの街へやってきた。

 ここは小学校低学年まで私の一家が暮らしていた場所だ。うちは転勤族で、あちこちへ引っ越しを繰り返してきた。

 私はきょろきょろあたりを見回しながら、駅からの商店街を歩く。

 変わってしまったお店もあるし、見覚えのあるお店もある。

 そういえば、ここらへんで駄菓子を買い食いしたこともあったっけ。なつかしいなあ。

 そんな気持ちにひたりながら、歩いた。

 じつは先日、当時の友人から私の実家に連絡があったのだ。「当時仲良くしていた友達の様子がおかしくなってしまった」、と。


香苗「仲良しだったあなたなら、なにかわかるかと思って――」


 そう言われて、今日この付近の喫茶店で約束したのだった。

 喫茶店の前では、当時のクラスメイトだった香苗が待っていた。すっかり大人びた様子で、私は時間の流れを感じた。私たちは再会を喜び、ひととおり近況報告をし合った。

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