飾道（かざりみち）

第59話 終わりと始まり

甚九郎は新たな素材とデザインの試みで成功を収め、彼のアトリエは新しい創造の可能性で満ち溢れていた。そんなある日、彼はふと、これまでの歩みを振り返り、壇鉄から受け継いだ遺産と自分が成し遂げてきたことを静かに見つめ直す時間を持つことにした。

甚九郎はアトリエの一角に並べられた過去の作品を見つめ、そこに映し出された自身の成長と変化に感慨を覚えた。壇鉄から学んだ技術と精神は彼の中でしっかりと根を張り、その上に彼自身の創造性と現代の感覚が芽吹いていた。

彼は師である壇鉄との対話を心に浮かべ、その温かな存在に感謝の気持ちを抱いた。そして、自分がこれからどのような道を歩むべきかについて、静かに思いを巡らせた。これまでの道のりは一つの終わりを迎えようとしていたが、それはまた新たな始まりでもあった。

甚九郎はこれまでの作品の中から特に心に残るいくつかを選び出し、それを特別な展示として地元の美術館で公開することを決めた。この展示は「終わりと始まり」と題され、彼がこれまでに経験した創造の旅と、これから迎える新たな挑戦を象徴するものだった。

展示会のオープニングでは、甚九郎は壇鉄への感謝の言葉と、自分が彼から受け継いだ遺産をどのように大切にしてきたかについて語った。彼の言葉は来場者たちの心に深く響き、多くの人々がその真摯な思いに共感した。

展示会は大成功を収め、甚九郎は多くの人々と共に過去の作品を振り返りつつ、新しい未来に向けた希望と期待を共有した。この展示を通じて、彼は自分の芸術が多くの人々に喜びと感動をもたらしていることを再確認し、これからもその道を歩み続ける決意を新たにした。

夜が更け、甚九郎は静かにアトリエに戻り、新たな作品のアイデアを思い描いた。彼はこれまでの歩みを振り返りつつも、未来への道がまだまだ続いていることを感じ取っていた。そして、彼の心には壇鉄への感謝と共に、新たな創造の旅への意欲が静かに湧き上がっていた。

その夜、星空の下で甚九郎は静かに微笑み、これからも自分の工芸の道を進み続けることを心に誓った。