第27話 未来への手紙

「伝承のアトリエ」での新しい簪の展示が地元コミュニティに感動を与えた後、甚九郎は壇鉄の遺志をさらに具体化し、未来への橋渡しを考え続けていた。彼は、壇鉄からの直接の語りかけを受け、過去の教えと未来の可能性を繋ぐ新しいプロジェクトを思い描く。


そのプロジェクトは「未来への手紙」と名付けられ、地元の人々に自分たちの願いや夢、そして壇鉄の技術や精神に対する思いを手紙に綴ってもらい、それを特別制作された時間カプセルに封じ込めるものだった。この時間カプセルは、将来のある時点で開封され、その中の手紙が未来の人々に読まれることを目的としていた。


甚九郎のこの提案は、地元コミュニティから熱烈な支持を受け、多くの人々が自分たちの手紙を書き寄せる。若者から老人まで、さまざまな背景を持つ人々が参加し、彼らの手紙には個人の願いや夢、壇鉄への敬意、そして未来への希望が綴られた。


甚九郎自身も、壇鉄との特別な絆を通じて得た教えと自身の願いを手紙に綴り、時間カプセルに加える。彼は、壇鉄の技術と精神が未来にどのような影響を与えるか、そしてそれがどのように受け継がれ、発展していくかを熱心に思い描いていた。


時間カプセルの埋蔵式は、「伝承のアトリエ」で盛大に行われ、地元コミュニティの人々や、遠方から駆け付けた参加者が一堂に会する。この式典では、未来への手紙プロジェクトの意義と、壇鉄と甚九郎、そして参加した全ての人々の絆が称えられた。


カプセルが地中に埋められる瞬間、甚九郎は改めて、自分と壇鉄、そして未来の人々との間に存在する見えない絆を感じる。彼は、このプロジェクトが時間と空間を超えて、多くの人々の心を繋ぎ、彼らの願いや夢、そして壇鉄の遺した技術と精神が未来にどのような光を灯すかを期待していた。


夜が訪れ、星々が輝く中、甚九郎は壇鉄への深い感謝と、未来への無限の希望を胸に、新たな日々へと歩みを進める。彼の活動を通じて、壇鉄の遺産は永遠に輝き続け、未来へと繋がる「時の彼方からの導き」であることを信じていた。

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