第11話:入学式
◇
入学式が始まった。
俺たちは空いていた後ろの席に三人横並びで座り、学院長のありがたい話を聞くことに。
ちなみに、ユリア、俺、シーシャの並びである。
俺が両手に華の形にしたかったのではなく、ユリアとシーシャは初対面なので気を利かせたのである。これから同じクラスになるとはいっても、最初のうちは緊張するだろうからな。
眠くなるような学院長のありがたい話が終わった後は、新入生代表の挨拶に移る。
すると、女生徒の黄色い声が上がった。
「確か、あれが主席の……えっと」
「リヒト殿下ですよ」
俺が名前を思い出せずにいると、左隣りのユリアが教えてくれた。
「ああ、そうだった」
試験の成績では満点である俺が一位だったが、貴族用の加点を加味すると、リヒト・セントリアという男が首席ということらしい。
リヒトがいなければ、危うく俺が面倒な挨拶をしなければいけない事態になっていたので、俺はあいつに感謝しなければならないな。
まあ、その場合でも平民ということになっている俺に話が回ってきたのかというのは不明だが。
「新入生を代表してご挨拶させていただきます」
壇上に上がったリヒトが一礼。
リヒトは金髪碧眼のなかなかに端正な顔立ちをした好青年という印象だった。
そして、俺の合計四十年以上の人生経験によれば、こいつは悪い奴ではなさそうだ。
入学試験の時に絡んできたユリウスが物語の悪役だとすれば、リヒトは主人公だと例えればわかりやすいだろうか。
王子として生まれ、容姿に恵まれ、実力にも恵まれ——と三物に恵まれた人物だが、不思議と羨ましくは感じない。
俺とは生きている世界が違いすぎて、僻みすらも感じないのだ。
「——新入生代表、リヒト・セントリア」
リヒトの挨拶が終わると、惜しみない拍手が贈られて退場。
こうして入学式はつつがなく終わったのだった。
◇
その後、講堂の外でクラスごとに学院生が集められた。
「俺がSクラスを担任するオスカ・シルバだ。講義では魔法を担当することになっているが……まあ、今はいい。とりあえずよろしくな」
服の上からでもムキムキなことが分かる筋肉オバケ。
魔法師でこれだけ肉体を鍛えているのは珍しい。
「今日はこれで解散でもいいんだが……ふむ、全員揃っているのは都合がいいな。ちょっと検査室まで着いてきてくれ。今から、魔力検査をやることにする」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます